KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

プレゼン道入門

 神戸大学理学部の松田卓也さんを呼んでの「プレゼン道」講演会に出る。富山大学では教養科目として「言語表現」を全学で開いており、その部会の恒例企画で毎年全国から「話す、書く」の専門家を呼んでいる。学生は40人ほど集まっていた。さすがに話は面白く、プロジェクタのスライドはモノクロのくっきりしたもの、ときどき大きな写真をいれてメリハリをつけるなど、参考になる点たくさんあり。続けて、教員対象の研修会が開かれて、こちらは私は出られなかったのだが、20人ほどの参加者があったとのこと。これまでで最も多い人数だ。

 懇親会の時に、「スライド(OHP)がとてもシンプルで力強かったですね」と聞くと、「あれはパワーポイントなんですよ」と。私が「パワーポイントとはとても思えないシンプルさ」と言うと、スライドは悟りの境地に達しているかも、と。昔はモノクロのスライドだったから、パワーポイントが出てきたときに、色を付けたり、動きをつけたり、音をつけたりして、一気ににぎやかになった。でも、にぎやかなスライドで喜んでいるうちはまだ青い。スライドのにぎやかさが、話者が本当に伝えたいことをぼやかしてしまう危険がある。そのことを感じ取ったものは、再びシンプルなモノクロのスライドに戻るのですな。---うーむ、なるほど。

 アイコンタクトの話。欧米では、目を見て話さないのは嘘をついているからだとされる。日本人はそういう習慣がないのでアイコンタクトが苦手である。聴衆の方を向かずにOHPを見て話したり、天井を見て話したりする人がほとんど。例外的なのは、皇太子夫妻で、彼らはどんな人に対してもびしっと目を見て話している。これはそう訓練されているのか、欧米の習慣を身につけたからなのか。データによるとサッチャー首相は話をしている80%の時間をアイコンタクトしていたという。プレゼンの場合は、具体的には、ワン・センテンス話す間は目をそらさないようにするといい。きょろきょろするのはだめ。

 横道だが、イギリスの議会では党首クラスの人は一番前に陣取って、白熱した議論を繰り広げる。日本の議会は、党首クラスは議場の一番後ろに陣取ってにらみをきかせる。自分が先頭に立って議論することはない。両国は実に対照的だ。学会でも「大物」と言われている人が、表には出ずに、裏でやっている人がいるが、私の最も嫌いなタイプである。張り子のトラである。時々無性に一発殴りたくなる。こういう人間のためにどれほど風通しが悪くなっていることか。横道終わり。

 ジェスチャーは時として話の内容よりも印象を左右する。大切なのはマイナスのジェスチャーをしないこと。たとえば、髪の毛をいじったり、手をポケットに入れたり、指し棒をもてあそんだり、ボールペンをくるくる回したりしない。聴衆はそちらに気を取られて話を聞かなくなる。

 質問の答え方には5通りの種類しかない。「イエス、そのとおり」「ノー、違います」「何とも言えません」「イエス。だけどね…」「ノー。だけどね…」の5種類だ。これをまず提示すること。

 楽しくてためになる講演であった。