KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

田中一『さよなら古い講義』

さよなら古い講義―質問書方式による会話型教育への招待

さよなら古い講義―質問書方式による会話型教育への招待

 田中一「さよなら古い講義」(北海道大学図書刊行会、1999、1800円)を読んだ。

 これは大人数の授業で、毎回紙一枚の「質問書」を受講生に書かせることによって、会話型の教育を実現したという実践報告である。質問書には、その授業の内容についての質問を書いてもらい、同時にそれを成績の材料とする。書かれた質問は全部目を通して、成績をつけつつ(その授業の内容に合致した質問であれば合格)、次回の時にその回答をするものを選ぶ(時間の都合で全部の質問には回答できない)。このようにして、学生を授業に集中させることができ、なおかつ、質問・回答というサイクルによって会話型の教育ができるということだ。

 これは非常に参考になった。教員は学生から質問が出ないことをしばしば嘆くけれども、紙を配ってみればほとんど全員が何かしら質問を書いて来るものである。このことは私自身が体験していた。だから田中さんの実践がうまくいっていることが本を読む以上に想像できる。田中さんの実践は、質問を紙に書いてもらうということを拡張し、システム化したものだ。

 実は、この春から別の大学で心理学の講義を頼まれている。非常勤でいろんな大学で授業をすることは珍しくないが、今回は100人以上のクラスということで、これは私にとっては初めての体験なのである(これまでがいかに恵まれていたかということにもなるか)。少人数のクラスがいかにいいとはいえ、効率の点で大人数で講義しなくてはならないこともある。その意味で大人数のクラスをいかにうまく運営するかということは自分にとってはチャレンジングな仕事でもあり、いろいろと作戦を練っている。これがうまくできれば、熟練した大学教師になれるかもしれないと思いつつ。

 はたしてどうなることか。