KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

子供はなぜボタンを押すのか

 素朴な疑問である。子供はなぜボタンをみるやいなやそれを押しまくるのだろうか。

 テレビ本体のボタンを押して、私が見ているのにチャンネルを変える。リモコンを見つければ、たくさんついているボタンをすべて押しまくってわけのわからないことになる。電気ストーブの切ボタンを押して、寒くなる。電気絨毯の「ダニパンチ」ボタンが知らない間に「入」になっている。プレステのCD「開」ボタンを押して、ゲームを中断させる。などなど。

 このように子供がめったやたらにボタンを押すので大迷惑をこうむっている日々なのである。ボタン押しばかりは何度いって聞かせてもやめてくれない。ボタンを見つけると吸い寄せられるように近づいていき、それを押すのである。困った。

 ボタンのように押せるようなものに対して思わず押してしまうような現象を認知心理学では「アフォーダンス(affordance)」という用語を使って説明する。なぜボタンを押してしまうのかといえば、それはボタンは押すという行動をアフォード(用意)しているからなのだという理屈である。つまり「それが押せる」と知覚した瞬間に押すという行動を可能にしているのである。

 別の例でいえば、切り株があったとする。「ちょうど座るのにいい感じである」と思えば、あなたは座る。別に無理して座らなくてもいいが、座れるわけだ。つまり切り株は座るという行動をアフォードしている。しかし、横になるには切り株は小さすぎる。つまり切り株は横になるという行動をアフォードしない。しかし、ネコにとっては横になるのにちょうどいいかもしれない。そのとき切り株はネコに対して横になることをアフォードする。このようにアフォーダンスは生体と環境とにより相互依存的に決まる。

 今、私は「押すことをアフォードしないボタン」を一生懸命考えている。物理的に押すことの出来ないボタンではなくて、一見して押す気にならないようなボタンである。これを発明すれば、子供のボタン押しに悩んでいる家庭に役立つし、特許を取って商品化すればお金持ちになれるかもしれないからだ。皆さんも一緒に考えてはくれないだろうか。儲けは山分けということで。