KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

ミスドは整理券を配るよう断固要求する

 私は控えめな人間なので、誰かに何かを断固として要求するということはめったにない。ところが世の中には、自分のことは差し置いて、断固として要求ばかりを他人に押しつける人々が増えているようだ。「断固三兄弟」という歌まではやっているというではないか。私の日記でこうした断固的要求を書くことは、「警察はスピード違反ネズミトリを即刻止めるよう断固要求する」以来二回目のことである。

 本題に入ろう。ミスタードーナツミスド)というドーナツ屋をときどき利用する。問題は混んでいるときに、必ず順番を無視して横からはいってくるおばさんである。横入り(私の言葉ではズルコミという)をする人は99%おばさんである。おじさんはその絶対数が少ないこともあって横入りはしない、というかできない。せいぜいおばさん軍団によって列からはじきだされるのがオチである。私は何度かそういう目にあっている。

 システム工学的な見地でいえば、ミスドの接客システムがなっていないのである。お客は列を作らない。それはお客が悪いのではなく、並ばせない店が悪い。ドーナツを並べたウインドーに向かって選びながら注文するという形のために、客はウインドーにへばりつく形になり横に広がる。この形のためにおばさんが横入りするスキができる。

 店員は自分の客の清算が終わった順に次の客をとる。したがって、順番を待っている客はどの店員が前の客の清算を早く終えるかをじっと観察していなくてはならない。店員は客の清算を終えると、「お決まりのお客様、どうぞ」という声をだす。ここで少しの躊躇もなく「はい。エンゼルクリームとね…」とよどみなく注文することが必要だ。私の観察データによると、ここで0.5秒以上の空白があった場合、80%以上の確率で横入りしてきたおばさんに注文権を奪われるのである。

 私は何度となくおばさんに不当に注文権を奪われている。したがって店員の「お決まりのお客様、どうぞ」の声に機敏に反応できるように訓練を重ねた。店内にはいっても心の中でシミュレーションを繰り返すことを忘れなかった。じっと店員の動きを観察する。どのドーナツを買うかはまだ決めていなかったが、それは注文権をとってから決めればいいことである。まず注文権をとることが大切だ。いよいよ、その時は来た。

  • お決まりのお客様、どうぞ。

 「はいっ!」 私は思わず手を高々とあげていた。