KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

ベストセラーの条件

……律儀に「読んでみた」を更新しているね。偉い。

読んだものは全部ここに出してみようと試みている。でも、それはちょっと恥ずかしいね。読んでいる本がいかに偏っているか、あるいはそのランダムぶりがわかってしまうから。あるいは学術書をあまり読んでいないことがバレバレだから。

……まあ、君のはちゃめちゃぶりは日記を読んでいれば十分良くわかるので、いまさら恥ずかしがる必要はないよ。

以前は多かれ少なかれ感動した本をセレクトして、取り上げて書いていたんだけれど、感動した本だけに、力を込めて書くのはけっこう大変。いい本について書くときは、それに負けないだけの文章が必要なのかもしれない。今は数行のコメントをして、面白かった部分を引用するだけなので、割と楽だ。

……感動の度合いというか、お勧め度を★印かなんかで、記してみたらどう?

考えてみたんだけど、あまり明示的にやるのもどうかと。それより、面白いことに気がついた。感動した本は、その本から引用する量も増えるんだ。だから、引用の量が多いものは、私的お勧め度が高いと読んでもらっていいと思う。逆に、引用の量が少ないのは、まあそれなりということだ。それにしたって、やはり一冊の本にするというのは大変なことだから、むげにけなしたくはない。注文はつけるけれど。

……なるほど、引用の量か。それはけっこう正確な指標になるかもしれないなあ。よく考えたら、論文の価値を評価するときに「何回他の論文の引用文献とされたか」を測るのに似ている。

まあ市販されている本は、売り上げ部数がわかるので、それが指標になるんだけどね。たとえば「30万部突破!」というのがそのままその本の価値を表明しているわけだし、同時に効果的な宣伝文句にもなっている。

……しかし、本のベストセラーというのはなんだか胡散臭いな。売れるということと、その本の価値とは別物だろう。つまりベストセラーには、「よく売れることを目的とした戦略がうまくはまった」という匂いがするからだ。

価値の問題になると、一体誰にとっても価値かという面倒なことになるのでここでは単純化して考えよう。「価値×期待」モデルを使う。「価値」というのは個別の読者にとってその本がどれくらい有用であるかということだ。自分に必要な情報を得ることはもちろん有用だが、そればかりでなくエンターテイメントでも有用と考える。もうひとつの「期待」というのは、自分がその本をどれくらい読めるかという期待値のことだ。つまり有用な本であっても(価値=100)、難解で読者が理解できなければ(期待=0)、100×0=ゼロの満足度になってしまう。逆に、易しい本であっても(期待=100)、内容が分かり切ったものばかりであれば(価値=0)、やはり満足度はゼロ。

……一般に有用な本というのは、読者の知らない情報を含んでいるから、読むのは難しいはずだ。

そのとおりで、ポイントは、有用な本であり(価値=100)、同時に、読むのに易しい本である(期待=100)というのは存在しないということ。せいぜい、半分くらいは有用で(価値=50)、半分くらいは易しく読める(期待=50)という本しか存在しないということだ。そしてこれこそがベストセラーの条件なのではないか。

……なるほど、たくさんの人に読んでもらうためには、無用であり、それゆえ楽に読める内容を少なくとも半分以上いれろということだな。

そう。これは本ばかりでなく、いろいろなケースにあてはまるような気がするよ。