アドラーのケース・セミナー―ライフ・パターンの心理学 (Adlerian Books)
- 作者: アルフレッドアドラー,ウォルター・ベランウルフ,A. Adler,W.Beran Wolfe,岩井俊憲
- 出版社/メーカー: 一光社
- 発売日: 2004/07
- メディア: 単行本
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アドラー派の精神科医は、患者を分析し再教育する間、すべての個人的な権威を捨てます。これは、分析者が患者に絶対的な隷属を要求し、患者が批判的な能力を使うことを拒否する精神分析の方法とは対照的です。
アドラー派の再教育は、医者と患者間の協力的な調査の性格を持っています。患者は、自分の人生から材料を提供し、精神科医は、解釈と勇気づけを与えます。精神科医は、洞察に当たってもどんな個人的な優越性でも最小限に抑えます。彼は、よき教育者と同様に、自分の立場を自分の生徒の自尊心を傷つけるためではなく、勇気づけるために使います。
アドラーが問題のある子どもにどのように対処したかというケースレポートを集めたものです。12人の特色のあるケースが記述されています。アドラー自身が何回もカウンセリングするという形態ではなく、あらかじめ問題児に対して医者や教師が記録を用意し、それをアドラーが読みながら推論していくのです。それはまるで推理小説のようでもありますが、ゆるぎない理論的な背景を持ってケースを読み解いていくのです。
その推論について受講生と討論したあと、どういう介入や指導をしていくかを示します。そのあと、子どもの親が呼び入れられ質問と指導をし、そのあと、子ども自身が呼ばれてやさしい言葉で話し合いが行われています(親子同時のケースもあります)。それは驚くほど簡潔で、「え?、これで終わり?」とも思わせるようなやりとりです。しかも、アドラー自身が話している時間がほとんどなのです。しかし、その後のフォローアップで問題が解決されているケースがほとんどであることから、いかに的を射たものであったかがわかります。
これを読むと、子どもの問題行動のパターンとその原理が読み解けるような気がしてきます。
彼らのような脇舞台の芸人たちから悪意を持って人間としての義務を避けているのだと考えてはいけません。彼らのパターン――共通の特徴は常に社会的に無益である――を続けさせているのは、すべての人間活動について終始一貫して彼らが無知だということです。彼らは、自分たちが挑戦する準備ができていないので、人生の大きい方の演技場を憧れのまなざしで見て、その上で、自分が順応に失敗していることを許してもらおうと試みます。
関連項目
- 岸見一郎『アドラー心理学入門』http://d.hatena.ne.jp/kogo/19990924/p1
- オスカー・クリステンセン編著『アドラー家族カウンセリング』http://d.hatena.ne.jp/kogo/20050608/p1
- フーバー、ホルフォード『初めてのアドラー心理学』http://d.hatena.ne.jp/kogo/20050622/p1
- ドライカース『アドラー心理学の基礎』http://d.hatena.ne.jp/kogo/20050627/p1
- ドライカース、キャッセル『やる気を引き出す教師の技量』http://d.hatena.ne.jp/kogo/20050629/p1
- ドライカース『人はどのように愛するのか』http://d.hatena.ne.jp/kogo/20050715/p1
- シャルマン、モサック『ライフ・スタイル診断』http://d.hatena.ne.jp/kogo/20050803/p1