「あたりまえ」を疑う社会学 質的調査のセンス (光文社新書)
- 作者: 好井裕明
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/02/16
- メディア: 新書
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おもしろい質的研究の例が詳しく取り上げられていて、それだけでもこの研究アプローチの魅力が伝わってくる。とりわけ『大衆演劇への旅』という研究では、京大生が一年二ヶ月の間、劇団員の1人として入り込み、悩み、変貌していく姿が「1人語り」によって描かれており、ダイジェストされたものでも読んで興奮した。
研究としての聞き取りには3つの立場があるという:
- 実証主義:人生は事実として客観的に捉えられる。
- 解釈的客観主義:語りに含まれる事実の解釈を聞き取る。それを重ねていくと、いつか飽和し、客観的事実に至る。
- 対話的構築主義:聞き取りの場は、語り手と聞き手の2人が相互に創造する。
著者はこの3番目(エスノメソドロジー)を支持する。一方、グラウンデッド・セオリー・アプローチは、現実から理論に至る過程で研究者の恣意的なものがはいるとして、つまらないとする。
それはともかく、いえるのは、研究という行為自体がその研究者の人生そのものにかなり重なるということだ。第三者でいることを許さないアプローチであることは確かだ。