KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

岩下修『AさせたいならBと言え』

AさせたいならBと言え (教育新書)

AさせたいならBと言え (教育新書)

授業では、グループワークをよく行います。「では、じゃんけんで進行役と記録係を決めてから、ワークを始めてください」と指示しても、じゃんけんから先が進まないことがしばしばあります。そういうときは、指示が具体的ではなかったと反省しなければなりません。小学生だろうが、大学生だろうが、社会人だろうが変わりはないのです。具体的ではない指示にはとまどうだけです。

明確な指示は具体的でなくてはなりません。「床をきれいにしよう」ではなくて「ゴミを10個拾おう」です。もちろん12個拾ってもいいのですが、あえて10個と指示するところがミソです。この本では、目標(A)を具体的な指示(B)に変換する例がたくさん紹介されています。具体的な指示のためには、「ユレのないもの」で指示すること、つまり、物、人、場所、数、音、色で指示することだと主張しています。

ガルウェイの『インナーゲーム』(http://d.hatena.ne.jp/kogo/20060723/p1)に出てくる「ボールをよく見ろ、ではなくて、ボールの回転を確認しろ」という例を思い出します。「ボールをよく見る」というのは指示ではなく、目標なのです。この目標を「ボールの回転を確認する」という指示に変換する必要があるのです。それがコーチの仕事です。

Aさせたいときに「Aをしろ」というのは芸がありませんし、「そういわれてできるのなら、最初からそうしているよ」と反論されるのがオチです。Aさせたいときに、いかにして具体的なBという活動を考え出すのか、それを楽しみと感じる人たちが根っからの教員なのでしょう。

ちょっとトリッキーな指示もあります。「打ったあとに力を入れよ」。これは「力を入れるな」と言えば逆に力が入ってしまうのを防いで、リラックスするための指示です。