KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

院ゼミコラム(9):指導教員はあなたの研究を覚えていない

あなたの指導教員は、あなたの研究を覚えていない。テーマくらいは覚えているだろうけど、具体的にどういう研究計画で、どこまで進んでいるのかを逐一覚えているわけではない。たとえ、あなたがどんなにマメに報告したとしても。

もちろん覚えている指導教員もいる。それは、担当している学部生、院生の数が少ない場合が1つ。1人、2人ならば覚えていることができるだろう。もうひとつは、指導学生のテーマが研究室のテーマとして決まっている場合。この場合は、いわば教員自身のテーマなのだから、覚えていることができる。

しかし、担当している学生が多くて、しかもテーマがめいめいばらばらの自由テーマであるという場合は、覚えているのは無理だ。だからといって、「先生は私の研究のことを覚えていない。関心がないんですね。どうでもいいんですね」と責めるのはちょっと待ってほしい。

あなたが自分の研究についてちゃんと説明すれば(レジュメを作ってくるとさらにいい)、指導教員は、適切なアドバイスをくれるはずだ。「えーと、この因子分析の結果は何次元だっけ?」と聞かれても、(先生、覚えていないんだ)と思うより前に、さっと資料を出してくればそれですむ話だ。

打合せするごとに、アドバイスや指導の方向が変わったりすることもあるかもしれない。(ああ、この人は、自分が前に言ったことも忘れているんだ)と思うかもしれない。

確かにそういう場合もあるかもしれないが、そのたびごとに、新しい発想でベスト(主観的に)のアドバイスをしている可能性の方が高い。だから、たとえ前の助言とは違ったとしても、より良い助言として聞けばいい。最終判断をするのは、「あなたの仕事」だ。

逆に、ひとつひとつあなたの研究に注文を付ける指導教員を、イメージしてみたらどうだろう? いったい「誰が」研究をしているのか、わからなくなってしまうのではないだろうか。

「あなたの研究」をしているのは「あなた」だ。指導教員ではない。あなたはあなたの研究に誇りを持つ。あなたは助言を受ける権利を持っている。だけど、命令されることはない。助言を受けても最終判断はあなたの仕事だ。

あなたの研究を覚えていない指導教員は、その意味で、けっこういい教員かもしれないよ。