卒論と修論を論文誌に投稿するように勧めているので、この数週間は論文原稿にせっせと赤入れをしている。私の赤入れの原則は「原文を生かす」ということだ。自分で文章を書き直してしまうと、その人の文章ではなくなってしまう。だから、書き直しはほとんどしない。
「原文を生かす」赤入れとは具体的には次のようにする。
文の順番を変える。
文の順番を変えるだけでよくなることが多い。「概略→詳細」「抽象的モデル→具体的な例」「既に分かっていること→これから調べること」などのように順番を整える。
段落レベルの構成を変える。
節のレベルまたは段落のレベルで順番を入れ替えるだけでよくなることも多い。構成の仕方は、作者の思い込みが初めからあって、それが続くので、第三者が思い込みなしに変更するとわかりやすく、スッキリすることが多い。
接続語を補ったり変える。
接続語は、文章の流れをコントロールするマーカーなので、積極的に使うようにする。そのあとで、なくても文章が流れる接続語があれば、それを削っていくと、読みやすい文章になる。「また」ばかり使っている人は接続語のバリエーションを積極的に使うようにしよう。
大胆に削る。
論文は、内容の一貫性が大事なので、関係の薄い内容は大胆に削る。作者は、自分の研究に思い入れがありすぎるので、あれもこれもと追加で書いてしまうけれども、テーマに関係のあることだけに絞ることが論文としては大事なのだ。したがって、こちらはバッサリと切ることになる。そのスペースを関係のあることで埋めれば、密度の濃い論文になっていく。
書き加えてほしい部分は、箇条書きでポイントを示す。
それでも書き加えてほしい部分が出てくる。その場合は、こちらで文章を書くのではなく、箇条書きで、「これとこれとこれについて書いてください」と示すことにしている。そうすることで作者の文章によって追加できる。