KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

“即レス” の人をやめる

2022年5月9日(月)

ジェイク・ナップ、ジョン・ゼラツキー『時間術大全:人生が本当に変わる「87の時間ワザ』(ダイヤモンド社, 2019)を読んでいます。Kindleで70%までのところです。すごくいい本なのでちょっと紹介します。

https://www.amazon.co.jp/dp/4478106118?tag=chiharunosite-22

仕事術・時間術(Getting Things Done, GTD)の本はこれまでにたくさん書かれています。代表的なものとして、デビッド・アレン『ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則』(二見書房, 2006)があります。私もこの本を読んで影響を受けました。

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4576060732/chiharunosite-22/

ナップとゼラツキーの本は、ToDoリストでは細かすぎるし、かといって目標リストでは遠すぎる、という観察から、今日一日のハイライトを決めてそれに集中しようということを提案します。しかし、今日のハイライトのタスクに集中することを妨げるような、気を散らす情報に囲まれて生きているのが私たちです。著者たち自身が、GmailやYouTubeで働いていたということで、これは説得力があります。私たちはメールやSNSに日々膨大な時間を使っているのです。ハイライトタスクに集中できないのも当然です。

私自身 ”即レス” の人を自認していました。「私にメールを送れば、10分以内に返事が来るでしょう」と公言していたのです。その通り、私のiMacではメールが来れば、リアルタイムでお知らせが表示されます。SlackでもメッセンジャーでもLINEでも、すぐにお知らせが表示され、私はそれに即レスしていました。TwitterでもFacebookでも自分の投稿に何かコメントがつけば、即レスです。まさに「即レスの人」!

しかし、これではハイライトタスクに集中する時間(これをレーザーモードと呼ぶ)が作れません。何からもじゃまされない60〜90分のレーザーモードを作り出すことが必要なのです。

そのためにこの本では、メールの処理を1日の終わりにまとめてやるように提案します。それもできるだけ返事を遅らせよう、と。スマホからは、SNSのアプリを全部削除しよう、と。そうすればSNSを巡回することはなくなり、その時間を何か別のことに振り向けることができます。

これが、レーザーモードを作り出すための第一歩です。この本にはさらにたくさんの戦術が紹介されています。その中に読者の参考になるものが必ず含まれていると思います。

とりあえず、私は ”即レス” の人をやめることを決心しました。メールチェックとメッセージのチェックは1日3回とします。多分それでもまったく問題は起こらないでしょう。そのごほうびとして、心の平穏とレーザーモードの時間を作り出すことができるのです。

松本清張の小説作法〜映画「砂の器」

2022年5月6日(金)

先週の小倉遠征のとき、松本清張記念館を訪問してきました。

https://www.seicho-mm.jp

小倉城だけでは物足りない人は、さらに庭園とこの記念館の3ヶ所の共通入場券がお得です。文学館のような施設は日本各地にあります。金沢に行ったときは金沢文芸館(五木寛之文庫)がおもしろかったです。小説をほとんど読まない私ですけれども『青春の門』は読んだことがありました。

https://www.kanazawa-museum.jp/bungei/

松本清張の本は一冊も読んだことがありません。それでもこの記念館はおもしろかったです。特に、杉並区高井戸にあった自宅の外観を館内に再現していて、その書庫の様子が見えるようにしてあるところです。松本清張の蔵書で私が読んだことのあるものはないかと探してみましたけれど、一冊もありませんでした。

特に印象に残ったところは、松本清張の推敲の仕方でした。清張は自分の本の改訂をしばしば行っていたとのことで、改訂のために赤が入れられた原稿が展示されていました。それを見ると、驚くことに、冒頭から2、3段落分のでだし部分をばっさりと「トル」指示をしているのですね。文章の冒頭部分といえば、一番力を入れて書く部分ですよね。それを気に入らないといって「トル」で削除しているのです。すごいな。

帰りの新幹線の中で、清張の本を一冊でも読もうと思って、館内ショップで売られているたくさんの本を眺めていました。そして、選んだのが、松本清張『実感的人生論』(中公文庫, 2004)でした。ああ、やっぱり小説じゃないんだ。

https://www.amazon.co.jp//dp/4122044499?tag=chiharunosite-22

新幹線の中で半分、自宅に戻ってから残りを読みました。自分の出生や小さかった頃の話が何度となく書かれていて、清張マニアにはぞくぞくするようなおもしろさがあるのかもしれませんけれども、私には全体として退屈でした。

その中で、「私の小説作法」と題したエッセイはいいなと思いました。気に入ったので抜き書きしてみます。この「小説」を「研究」に置き換えて読むと、味わい深いのです。

私の小説作法

 筋。……小説は「何を書くべきか」が前提であるから、それが決まってから「いかに書くべきか」の作法の問題となる。近ごろ文壇の「不毛」がいわれるのは、作家が何を書くべきかが発見できず、あいまいな発想を「いかに書くべきか」に片寄せているためであろうか。

 取材。……たとえ筋は空想であっても、小説には現実がなければならないから、部分についてはできるだけその方面のことを取材する。

 視点。……いわゆる私小説系列のものは避けている。たとえ自分がそこにいても、ナマに近いかたちでは出さない。……自分の経験なり体験なりは、いくらでも他人を語る様式の中に持ち込めるし、そのほうが強く書けるように思われる。

 背景。……内外の名作といわれるものを読むと、作者がその背景を選ぶのに細心の注意を払っていることがよくわかる。小説の雰囲気をもり上げる何よりの要素であろう。

 文章。……小説を書きはじめたころは、どういう文体にしていいかわからないくて迷った。結局、平明で簡潔なものを志したが、これは中年で小説を書きはじめたためかもしれない。

 交換作業。……というと妙なことばだが、私の場合、一つのものを長くつづけてやれないという意味である。極端な例でいうと、現代小説と歴史小説とを交互に進行して書いたほうがどちらにも新鮮さを感じて、自分の体質には向くようである。だれにでもすすめられる作法ではない。

■

松本清張の小説を読んだことがなかったので、映画ならみられるかなと思って検索しました。課金しているNetflixで「砂の器」がみられることがわかったので、見始めました。

https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/03988/

映画の最初はやっぱり退屈で、「ああ、だから自分は推理ものが好きじゃないんだ」ということを再確認しました。でも、映画の中の風景の美しさや懐かしさで見続けました。そうしたら、ハンセン病の話が出てくる後半から引き込まれていき、最後は感動で終わりました。もし松本清張記念館に行っていなければ、「砂の器」も見ることはなかったでしょう。よかったです。

おとなの遠足〜ライブみたいなワークショップ

2022年5月2日(月)

第2回遠征は、京都で途中下車してからの小倉でした。小倉にeスクール卒業生が各地から集まりました。一人旅も気楽でいいですけど、気のおけない仲間が集まってワイワイしながらの旅もいいものです。これを「おとなの遠足」と呼びたいと思います。

おとなの遠足の前に、10人以下の少人数のワークショップを開きました(今回は7名の参加)。対面でのワークショップは久しぶりでした。コロナの状況では大人数が集まりにくいということもありますので、こうした形式のワークショップはいいと思いました。

講演ではなく、参加者から誰にどんな内容を教えているのかということを聞き取って、それをインストラクショナルデザインの視点でみんなで考えていこうというワークショップです。理論から入るのではなく、参加者一人ひとりの具体的な問題から入っていきます。まだ歯がゆいところはあります。しかし、有望な形式です。それは参加者の方も感じていたようで「ライブみたい」という感想にそれが現れていました。

これからも、遠征先で可能であれば、少人数ワークショップを開いていきたいと思っています。ワークショップのテーマは、アドラー心理学や教える技術の広いところでも、もう少しトピックを絞ってもいいと思います。もし、10人以下が集められそうだという場所があれば、私に声をかけてください。メールは kogo@waseda.jp です。