KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

きのくに子どもの村学園を訪問

 和歌山県のきのくに子どもの村学園を見学した。研究者仲間三人と一緒に参加。この学園には小学校、中学校、高等専修学校があり、ニイルの思想を受け継いだ実践をしている。ニイルの考え方についてはまだ勉強をしていないので解説をしない。ここでは印象のみを書くので、表面的な記述であることを了解されたい。毎週木曜は、学園の見学ツアーが行われている。これは現職の先生や研究者、あるいはここに入学を希望する子どもの親が様子を見にくるものだ。今回は年度最後の見学なので、参加者は40人くらいと通常よりも多かったそうだ。

 学園は山の奥にあり、子どもたちは宿舎生活をしている。週末には自宅に帰る子どももいる。授業は、プロジェクトを基本にして、それに必要な基礎学習を行うというシステムに特徴がある。プロジェクトは学年の枠を取り払った縦割りのグループで、子どもが自分で選ぶことができる。たとえば、「工務店」プロジェクトでは保育所の建物を建てたり、露天風呂を作ったりする。「ファーム」ではもち米を育てて、それで団子を作ったり、藍染めのハンカチを作ったりする。「健康家族」では健康について調べたり、あんまをしたりする。「探検クラブ」では島に出かけてキャンプをしたりする。以上は小学校のプロジェクトで、中学では「電子工作」、「動植物研究所」、「わらじ組」がある。わらじ組は唯一担任がいないプロジェクトでそのときにより、参加者の相談によって何をするのかを決めていく。

 読み書き計算などの基礎学習はプロジェクトの部屋でまとめて行われる。そのとき必要に応じて学年でおおまかに分けて、複数の先生が面倒を見る。教科書を使わず、プロジェクトの中で必要になってくる文脈によって学習する。たとえば、建物を建てるときにセメントを使うなら、セメントと水を混ぜ合わせるときに「割合」ということを学ぶのである。教科書から与えられるのではなく、自分がやっているプロジェクトに必要だという文脈で使える知識と技能を学ぶのである。

 もうひとつの特徴は話し合いによって決めていくということの重視である。実際には見られなかったが、全校の子どもが集まって集会が行われるらしい。そこでは議題があらかじめ募集される。プロジェクトの授業を見た印象では、先生はあまり表に出ず、子どもが司会をし、子どもが積極的に発言し、最終的には多数決によっていろいろな事項を決めていく。先生はここでは「○○先生」と呼ばれず、ニックネームで呼ばれる。子どもは先生を「先生」ではなく「大人」と呼ぶ。

 きのくにについては、また明日書くことにしよう。