KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

「それ」が持っているエネルギー

本明寛監修、久保田圭吾・野口京子編『最新・心理学序説』(金子書房, 2002)という本が届いた。心理学の教科書だ。どういうルートからか、1ページのコラム記事を頼まれた。「CAIからeLearningへ」というタイトルで書いた。

一昔前のCAIは学校現場に拒否され、根付くことはなかった。今は、eLearningという名前でコンピュータとネットワークを利用した教育システムが試されようとしている。はやりすたりがあり、名前はさまざまに変わっても、それでもそこには学習の理論が一貫して働いているのだ。……というようなことを書いた。

この本は、心理学入門や心理学概論の授業で使われるのだろう。実験心理学から臨床心理学まで、幅広くカバーしている。心理学の幅の広さを実感する。

昨日の講演で、私が心理学概論の授業をする場合は、12回のうち1回をアドラー心理学の紹介に当てる、といった。大学の授業は15週でワンセットだが、そのうち2回は中間テストと最終テストで使い、1回は祝日などで休みになるので、正味の授業は12回くらいになる。そのうち1回をアドラー心理学に当てるんだといったら、「12回全部をアドラー心理学でやってください」と注文された。

いや、そんなに詳しくは自分自身講じることができないし、「心理学概論」の授業でそれをやったらシラバス違反になる。もちろん、アドラー心理学の科学性、理論の一貫性、実践への適用、そして柔軟性を評価している。けれども、ひいきの引き倒しにならないように注意する。

そういえば、昨日の話ではどういう流れか、エスペラントの話題も出た。私が「エスペラントをやるとですね、経済的に儲かるとかそういうことは……一切ないです」といったら、聞いていた人が「エスペラントをやると儲かる、というのかと思って期待したのに」というんだね。そんなことあるわけないよ。あなたは、アドラー心理学をやっていて、儲かりましたか?

経済的に儲かるとかそういう次元ではなくて、別次元の何かを得ているわけでしょう。経済でもなく、人間関係でもなく、何か「それ」が持っているエネルギーのようなものに惹かれて、それに関わっているのではないんじゃないかな。今生き残っている思想には人を引きつけるエネルギーのようなものがあるんだ。