KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

新潟県立教育センターで講演

新潟県立教育センターで、高校の国語教員を対象に講演してきた。演題は「大学生の基礎技能として作文を教える」。1時間半、スライドを使って話をした後、休憩時間中に質問を書いてもらい、それから1時間その質問をもとに質疑応答をした。その感想と質問を掲げておこう。順不同。

  • 高校では小論文指導にかなりの負担が、受験の面に比重を置いてかかります。文章を書くことが自分の思考力を高めることに気づいてゆく生徒もほんのわずかですが現れています。合格よりもそのことが大切であると思いながら、今後も指導を続けます。興味深く拝聴しました。ありがとうございました。
  • 高校の現場で行われている小論文指導と合致した内容だったので、大変参考になりました。もちろんこのように整えられた理論で指導しているわけではありませんが。
  • 小学校の「読書感想文」も「夏休みの日記」も「自由研究」もやり方を全く指導しないで宿題に出すことが間違っているので、感想文そのものがそんなに悪いとは考えませんが……。ただ、指導すると「書評」になるようには思います。
  • 私たちは言語を使って思考するのだと思いますが、ある程度長い文章を書かないと、ものを考えることができないのかどうか。
  • ディベートの授業時に、他人から誤解されずに自分の考えを主張することが大切だ、と教えたことがあります。その際「自分の意見を表明したら、その理由をナンバリングして列挙しなさい」程度しか教えませんでした。しかし、先生のお話を伺って「誤解されないようにする」にはいくつかの実際的な方法があることを知り、とても参考になると同時に、私の授業の粗雑さを改めて思い至りました。「書くこと」「話すこと」の授業に生かさせていただきます。
  • 分かりやすい講演でした。根拠の部分の指導はどうされていますか。高校生は主張を支える根拠がなかなか出せません。やはり情報ということでしょうか。
  • 文章は余韻といった無駄なものをズバズバと切り捨てると明解になると感じました。けれども、明解になりすぎて読者に飽きは来ないでしょうか。
  • 添削テンプレートは参考になりました。
  • 心理学とこのような文章を書く関連性を教えてください。
  • 添削が一番なのだろうが、客観的な評価をどのようにするか? 型にうまくはまってるかどうかのチェックは容易か? ポイントを明示して自己評価、他者評価するのが一般的だが、もっと適切な評価ができないか。文章を書かせる際に一番引っかかるのは評価評定である。
  • 根拠、論拠、裏付けの三つの使い分けをうまくできるようになるためのトレーニングはあるか?
  • 実用文、実用的な言語技術の教育が盛んになればなるほど文学的文章の読み方、書き方がないがしろになるような期がする。両者とも並べて学べないだろうか? これまでも決して文学的教材を十分指導してきたとは言えない。これらの研究も進めるべきなのでは。
  • 同じく型にはまった文章でも、一方が分かりやすく、一方がわかりにくいという場合がある。次に何を指導すればよいか。
  • 「ありきたりの結論」にならないようにするにはどのような指導をすればよいか。
  • 実際に大学生はどのように上達していくのか。具体的に変化を知りたい。
  • 技術の訓練であるというところに納得しました。
  • 「何をいっているのかわからないぞ」という教科書があります。自分の読解力のなさの成果、と思っておりましたが、そうでもないのかもしれない、と自信を取り戻しました。
  • 文章をパソコンでなく、手書きで書かせることはありますか。型を身につけることが目的だから、ないのでしょうか。
  • 論理的な実用文を書くスキルが成り立つ前提は、論理的な思考能力がある読み手の存在である。従って、学術論文などの記述には役に立つだろうが、実社会ではいかがなものかと思われる。「教科「情報」は一年次で履修させることが望ましい」これは「必ず一年次で履修させること」と読みます。このように実社会では「行間を読む」力が要求されます。行間を読むことに慣れた人間は、どんな文でも裏があると思うのではないでしょうか。また、このような文と読みを教育機関の上層部が平気でする社会に、論理的な実用文が通用するでしょうか? お役所コトバなんていうのか典型的な日本での「実用文」に思われます(どうにでも読める便利な文)。それが問題だから改革するんだ!という発想はよいですが、構造改革なんてなかなか進展しないものです。以前会議で「理論」を述べたところ、「理屈はわかるけどそれじゃあ情がないよ」の一言で玉砕しました。「無理があれば道理引っ込む」。それから「正しい意見なんだけど、あの人の意見じゃ賛成できないよな」なんてのもあります。そういった不合理な人間感情や、人間関係ってものを無視したところに、実用文の世界があるんでしょうか。