KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

治療構造論

心理療法の効果研究についてだが、2003年の日記にアドラー心理学会のシンポジウムのことを書いていたのを見つけた。そこには、こんなメモが:

心療内科医の中川晶さん(『心療内科医のメルヘンセラピー』(講談社)著者)の講演「心療内科における治療構造論」から幕を開ける。その中で紹介されたメタ分析「心理療法の効果を決める要因」がその後の大展開の重要な伏線である。

そのデータは、こう言っている。治療効果を決める割合は、クライエント要因40%、治療関係要因(セラピストの人柄など)30%、そして技法やモデルの要因はたったの15%、それはプラセボ15%と同等でしかない。いったい心理療法における技法というのは何なのか?

講演に続き、シンポジウムが開かれた。そこで明らかにされたのは「治療とはだましの構造である」という命題である。つまり、クライエントが乗ってくるパラダイムがあればそれでOKなのだ。乗れる(つまりうまくだまされる)のであれば、フロイトでも箱庭でもなんでもよいのだ。そして、セラピストの仕事はクライエントが乗れるパラダイムを提供することにある。

ナラティブ・セラピーが効果的なのは、クライエント自身にその人が乗っているパラダイム(物語の集積)を治療という形で聞き出すからだ。クライエント本人に聞くのだから、間違いようなく、セラピストはクライエントが乗れるパラダイムを推測し、提供することができる。もちろんセラピストが広いレパートリーを持っていることが必要条件だが。

そのときはあまり意味がよくわからなかったが、今もう一度コピーしてみるとその意味がよくわかる。