KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

ドライカース、キャッセル『やる気を引き出す教師の技量』

やる気を引き出す教師の技量―管理・強制教師から民主的グループ・リーダーへ

やる気を引き出す教師の技量―管理・強制教師から民主的グループ・リーダーへ

原題は Discipline Without Tears。このコンパクトな本によって、ドライカースはアドラー心理学の教育と教師についての考え方を凝縮しています。

原理の1つは、独裁主義者でもなく、自由放任主義者でもなく、民主的な教師を目指しなさいということです。

子供が示す誤った行動の4つのパターン、つまり、「注目を引く」、「力を誇示する」、「復讐する」、「無気力・無能さを示す」(これらは子供だけでなく、大人でもよくありますね)という行動にどのように対処すれば良いかということも具体的に示されています。

もうひとつのポイントは、競争ではなく、協働を目指そうということですが、これはアドラーの時代から主張されてきたにもかかわらず、現在でもますます競争指向は強まっているように感じます。競争的な雰囲気の中では、相互尊敬や自分の責任を果たすことで貢献するという行動は極端に制限されてしまうでしょう。

勇気づけについても具体的な説明がされています。それが、賞賛や褒めそやすこととどう違うのかということが重要です。「あなたはそのままで十分いい」というメッセージを伝えることが勇気づけですが、もともと理想的な自分と現在の自分の落差である劣等感が誰にでもあるということを主張するアドラー心理学において、「そのままでいい」というのは矛盾しているように見えます。

しかし、「そのままでいい」ということを認められた中で、人は安心して努力することができるのかもしれません。点数や競争に追い立てられて、やむなくした努力は、安心や信頼の中でされた努力とは、その価値や効果が違うものになるでしょう。

もし、あなたが「自由でいたい」と叫んで、あなたの先生がそれに応じて技能を教えてくれなかったなら、あなた自身が無知の鎖に拘束されていたでしょう。あなたが学んだものが、あなたを自由にさせたのです。……訓練は、自由が成長して行く種なのです。