KogoLab Research & Review

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野田敏孝『初めての教育論文』

初めての教育論文―現場教師が研究論文を書くための65のポイント

初めての教育論文―現場教師が研究論文を書くための65のポイント

リフォーム番組と教育論文の構成はよく似ているそうです。

  1. 現場検証(児童の実態と改善向上を図りたい点を明確にする)
  2. リフォームプランの提示(児童をどのように変えていきたいのかを明確にする)
  3. リフォーム予算の提示(授業の期間、あるいは論文の枚数といった制約)
  4. 匠によるリフォーム作業(構想に沿って実践を行う)
  5. リフォーム前後による比較(実践前後の変容の姿を示す)

なるほど、これなら教育論文を書いていくことができそうです。この本はこうしたステップに沿った丁寧なマニュアルになっています。

科学論文と実践論文の違いについて、科学論文は仮説実証型であるのに対して、実践論文は、はっきりと仮説を示さずに(見通しはありますが)実践上の問題点を解決するための取り組みを行い、その結果こんな手だてを取ればいいことがわかったという結論が導かれる形式になります。実践を行いつつ、構想が変わっていくこともありえます。事例は複数の方が一般性が高まり、説得力が増します。

教育実践の場合は、実験計画法は適用しにくいと思いますが、この本でもt検定までを説明しています。とはいえ、統制群が作りにくい現場では、事例を積み重ねていくしかないような気がします。

また、変容を観察するのに、特定の抽出児を見ていくことと(理論的サンプルですね)、クラス全体(総括的な評価といえます)を見ていくことの両方を行うことの重要性も指摘しています。

今後は、「1クラス事例研究」の方法論をより精緻化していくことで、論文の数を増やし、教育研究が発展していくのではないかと思います。

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