KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

アドラー『人はなぜ神経症になるのか』

人はなぜ神経症になるのか

人はなぜ神経症になるのか

個人的な優越性を追求すると、それは必ずや人生の課題のうちの一つをバランスを崩した形で拡大します。その場合、個人がいだく成功の理想は、社会的な名声か、事業の成功か、あるいは性的な征服に限られてくるようです。そこで現れてくるのは、闘う嫉妬深い立身出世第一主義者、他のすべての人を犠牲にして自分の利益を広げていこうとする仕事の実力者、さらに、自称ドンファンである恋の不義者です。どの人も人生の調和をかき乱し、多くの必要な要求を満たさないままにし、狭い行動領域においてさらに一層狂気じみた仕方で優越性を追求することで補償しようとします。

アドラー先生自身が、さまざまなケースを取り上げながら、課題にチャレンジする勇気がないために、優越性の追求が誤った方向でなされ、それが症状となって現れる、という理論を一貫して説明しています。

本文の構成は必ずしもわかりやすく並べられたものではないので、訳者の岸見先生が丁寧に書いている巻末の解説を先に読んでから、本編を読むことをお勧めします。この解説だけで、この本を買う価値があります。