KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

一対一の議論ができるのはオンライン開催ならではのメリット

2021年10月18日(月)

日本教育工学会2021年度秋季全国大会が、10月16日(土)〜17日(日)オンラインで開催されました。私は以下のタイトルで発表しました。

向後 千春(2021)授業ビデオにおけるマップ提示と学生参加の効果:パイロットスタディ 日本教育工学会2021年秋季全国大会講演論文集, Pp.107-108

〈あらまし〉大学院修士課程のフルオンデマンド授業において、スライドの代わりにマップを 提示しながらレクチャーをした。また、履修者の一部がZoomによる収録に参加した。全授業 の最終回にアンケートを実施した結果(N=23, 回収率65.7%)、スライドとマップの提示で は、マップの提示がより好まれること(74%)、また学生参加と講師単独のビデオ収録では、 学生参加のビデオがより好まれること(96%)が明らかになった。

大会期間中、私は函館に出張中でした。それでも学会発表ができたのはオンラインならではのメリットかなと思います。

1時間10分のセッションの中でたくさんの発表が並行していましたので、そんなに来てくれる人はいないかなと思っていました。しかし、何人かの人がコメントや質問をしてくれて、良い議論ができました。こうして落ち着いて話ができるのもオンラインならではのことです。対面のポスター発表ですと、ガヤガヤしていて、また他の人たちのプレッシャーもありますので、一対一でなかなか話せないところがあります。

コメント・質問のポイントは以下のようなところです。

(1) マインドマップは中学校・高校でも活用できますか。

→ すでに「コンセプトマップ(概念マップ)」という名称でたくさんの授業実践があります。両者は出自も違いますし、少し違うのですが(コンセプトマップではリンクにも関係性のラベルを貼る)、マップという形での可視化という点では共通しています。本研究ではマインドマップを少しずつ開きながら説明するというところがポイントです。

(2) 学生参加のビデオはコスト面でどうですか。

→ ビデオ配信が一年限りだとすると、コストは高くなるでしょう。学生が映っていることについて承諾をとれば、数年間は使える可能性はあります。また、そうしなくても、解説部分だけを編集切り取りをして公開すると、良い教材ビデオとなる可能性は高いです。

(3) マップ作成の労力はどうですか。

→ スライドを作成するときの労力に比較すると、マップの方がはるかに楽です。デザイン面を考えなくて済むことや、思いついた順に書いていっても、最終的には階層構造にまとまっていくことなどが原因として考えられます。

(4) 学生参加とマップの使用は別のテーマですか。

→ そう考えていたのですが、意外と結びついているかもです。たとえば、マップを編集モードにすれば、学生の質問などをビデオ収録のその場で追記していくことができます。そうすることによって、参加している学生にとっては、発言や質問を動機づけられることになるかもしれません。

(5) 生徒役に向き不向きはありますか。

→ ありません。むしろ色々な学生が参加してくれることがメリットになります。そのことによって説明のくわしさを調整したり、質問の難しさを調整したりすることができます。それは結果として、わかりやすいビデオを作ることになります。

(6) 予備校の「実況シリーズ」ビデオの作り方に似ていますね。

→ 「実況シリーズ」は見たことがないですが、似ていても不思議はないです。他にもNHKの教育番組では常に子ども役を番組中に登場させています。視聴者の代表がビデオ中に出てくることは、経験的に有効だと考えられてきたわけです。そう考えると、大学という文化では、なぜこうしたことがなかったのかという方が問題提起として面白いかもです。

以上が発表中にいただいたコメント・質問と私からの回答です。

 

また、内容の紹介ビデオはこちらからYouTubeでご覧いただけます(16分)。コメント欄を開放してありますので、コメント・質問などありましたら投稿してください。

https://youtu.be/z45hxrqQrhw