KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

おとなの研究コースを5年間開催して気づいた大学システムの堅牢さ

2022年2月11日(金)

2月5日(土)に第10回おとなの研究会を開きました。これが最終回でした。おとなの研究会は、おとなの研究コースで学んでいる人たちの研究発表の場として開いてきました。おとなの研究コースというのは、現場を持って働いている人が「研究」を始めたらどうなるだろうという意図で開発したものです。

ひとつのシーズンは3ヶ月(2週間x6回)で終了し、全部で次の4シーズンからなっています。

(1) テーマの設定と先行研究の調査
(2) インタビュー調査(質的分析)
(3) アンケート調査(量的分析)
(4) 論文の作成

この内容は、私が大学で行っている卒論ゼミの内容を下敷きにしています。ですので、このコースを完遂すると大体学士レベルのスキルを身につけたといっていいでしょう。このようにその「志」としてはよいものであったと今でも思います。しかし問題は離脱率の高さでした。これは最後まで改善できませんでした。

改善すべき点はだいたいあたりはついています。ひとつはビデオでの解説が簡略すぎたことです。ここに具体的事例を入れるべきでした。もう1つは毎回の課題が難しかったことです。毎回の課題を進めていくとそのシーズンの成果物というべきものが完成するように設計してあります。課題のための時間も2週間とってありました。しかし、課題の提出が滞ると離脱につながってしまいます。

このように今回のコースで改善すべき点はかなり明確にわかりました。その一方で、大学やゼミという伝統的なシステムが相当堅牢であることはひとつの発見でもありました。卒論ゼミの2年間という期間で、全部で60週(15週 x 4学期)をかけて卒業研究を完成させるというシステムはかなりすごいということです。

大学の中で働いている自分でしたので、これは灯台下暗し的な見逃しでした。これは制度の力というべきものです。そういう制度になっているので学生が疑問を抱かずに卒業研究に取り組むわけです。それは同時に自分なりのニーズを感じることなく作業に入っていくというリスクがあるわけですけれども、それは先生の指導の過程で導入することはできます。

こんなふうに最初は制度の力によって作業に取り組んでいくわけですが、60週が終わる頃にはそれが個人に内在化されてひとつの「倫理の力」に変化するのかもしれません。そうなるといいですが。おとなの研究コースでは離脱率は高かったものの、最終的に完遂した人はいます。そうした人がおとなの研究会で自分の研究成果を発表するに至りました。その人たちは自分では気づいていないかもしれませんけれども、何らかの倫理の力を自分に内在化させたのではないかと思っています。