KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

【ブログ】みつる保育園を見学:穏やかで活動に満ちた園児

2022年7月18日(月・祝)

7月7日(木)から10日(日)にかけて、熊本2泊、福岡1泊の遠征をしてきました。その中で、天草にあるみつる保育園を見学させてもらいました。みつる保育園は、わらべうたを使うコダーイ・メソッド(コダーイ・システム)とアドラー心理学の考え方を取り入れているところが特徴的です。

社会福祉法人松涛園みつる福祉会みつる保育園(公式ホームページ)

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2015年に名古屋で開かれたアドラー心理学会で、みつる保育園の実践をビデオで見たのが私にとっては衝撃的でした。それは園児同士のケンカの様子でした。暴力になりそうな時以外は、保育士は徹底的に介入しないのです。そのビデオがとても印象的だったので、私は2017年に出版した『アドラー式「しない」子育て』の中で、このように書いています。

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> そこでは保育士さんは子どもに介入しない、けんかさせるんです。ただし、手が出そうなときにはふたりの間に体を入れるんです、相手に当たらないように。その後はスッと体を引いて、何もせず見ている(笑)。するとふたりで言い合いになり、言い負けた方が「もうキラーイ」と部屋の隅に行って泣いていて、他の子が来て声をかけたりしても、本人は収まらない。でもだんだん気持ちが落ち着いてくると、また別の遊びを始める。そこから考えるに、やはり基本的に親でも保育士でも、子どもの喧嘩には介入できないんです。

そんな経緯で、いつかみつる保育園を見学したいと思っていたわけです。

園に行く前に、ちょうど年長さんが近くの海岸で海遊びをしているというので、そちらに回りました。雲仙を目の前にした有明海なので波は穏やかですけれども、けっこうゴツゴツした岩場がある海岸です。十数人の園児を2人の保育士が見ていました。

本当に岩場はゴツゴツしていて、大人でも気を緩めると滑ったり、転んだりしそうなところです。そこを園児たちが自由に遊んでいます。あるグループは泳いだり、別のグループは岩場から海にジャンプしたり、また別のグループは潮溜まりにいる魚を捕まえようとしたりしています。

岩場から海にジャンプする様子はこんな感じです。みんな次々とジャンプしていきます。ひとりだけなかなかジャンプできない子がいました。どうするのかなと見ていたら、すでにジャンプした子たちが「がんばれ〜」とか声を上げることもなく、保育士が「みんなで応援してあげよう」ということもなく、本人に任せていました(と私には見えました)。しばらく逡巡したあとで、保育士が「今日はやめておく?」と声をかけると、その子は「うん」と言って岩を歩いていきました。周りの子はそれについて何を言うわけでもなく、自然に次の遊びに移っていきました。

この一連のエピソードは、私に「いいなあ」と感じさせました。園児一人ひとりが尊重されていて、「みんないっしょに」というプレッシャーを受けることがない。保育士がそうした態度を取れば、子どもたちも自然にそうなるのでしょう。何かすごくアドラー的な感じだと言われれば、確かにそう思います。

このあと、海から園に移って、園内の様子を見学させてもらいました。一言でいえば「穏やか」なのです。園児はそれぞれにいろいろな活動をしていて、活発なのですけれども、騒いだり、大声をあげたり、バタバタすることがない。保育士さんたちも、本当に静かです。これもまた私には衝撃的でした。子ども同士がけんかする場面を密かに期待していた私ですけど、けんかの場面はありませんでした。

そんなわけで、みつる保育園を見学したいという私の願いは7年越しでかないました。また、12月にも訪問する予定です。