KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

なじんだトイレ

大学の建物もバリアフリー化ということで、私のいるオンボロ校舎にもエレベーターがつくことになった。だいたい4階建てなのにエレベーターがないのがおかしい。しかも私の部屋は4階にある。10年もの間、4階までの階段を上り下りしてきたのだ。おかげで、4階まで上っても息が切れることはなくなった。ときどきしんどい顔をして4階まで上ってくる学生さんを見ることがあるけれども、運動不足であろう。

エレベーターをつけるのはいいんだけれども、それならいっそのこと建て直したほうがいいんじゃないか。実際は、もう建て直しの時期に来ているのだ。大学では古い順番に校舎の建て直しがされている。経済学部、人文学部がすでに立派な校舎になった。しかし、建て直しのための予算がなかなかおりないらしい。人員も削減されているし、独立行政法人化へのレールも敷かれているということで、国立大学には寒い時代である。

今、私にとって切実な問題はトイレが使えないことだ。エレベーターはトイレの隣の部屋を削って設置される。並行してトイレもリフォームするので、工事期間中は1階から4階までのすべてのトイレが使えなくなる。1階の中庭に仮設トイレが設けられた。

それにしても、いちいちトイレのたびに4階から1階に下り、用を足してからまた4階まで上るのは疲れる。私はコーヒーをよく飲むので、トイレに頻繁に行く人なのである。うう、つらい。仮設トイレというのはわびしいものである。トイレに不可欠な安らぎというものがない。トイレというのは、用を足しながら、ふーっと深い息をつけるような場所でなくてはならないと思う。

10年間なじんだトイレには安らぎがあった。今日、校舎の外を歩いていたら、4階の窓からロープにつるされた朝顔が降ろされてくるのを目撃した。私の安らぎの場所もしばらくさようならである。