KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

獅子舞とコトバの解読システム

獅子舞いが来た。村祭りだ。朝から夜中まで、一軒一軒の家を回って踊りを見せるのだ。私がこの集落に来たときに「獅子舞いをやらんか?」と誘われたくらいで、若い踊り手がいなくて、とだえていたものだ。それが今年、復活したのだった。後ろの方で、隣の爺ちゃんがうれしそうに身体をお囃子に合わせて揺らしているのが印象的だった。きっと若い頃は踊り手だったのだろう。

家に広い部屋があればそこでおどってもらうのだが、そういう部屋もないので、庭先にござを敷いて、そこで踊ってもらった。引率の人が、まず来て「オハナがあればそれを受け取っておきますが」というので、「オハナは用意してません」というと、怪訝な顔をして行ってしまった。

そうこうするうちに獅子舞いが始まった。その途中で、隣家の人が来て、また「オハナがあれば…」と言う。私は「オハナというのはひょっとしてこのこと?」とご祝儀袋を見せると「そうそう」といって持っていった。

獅子舞いが終わると、一人が口上を述べる。そのときにご祝儀を前に置いて、口上の中で、ご祝儀袋に書いてある「向後千春」という名前を入れるわけだ。だから「オハナ」がないと困るのだった。オハナの意味が分からなかった私であった。

これを持って「コトバは文化」などというのはたやすい。しかし、コトバが文化なのではなく、コトバの解読システムこそが文化なのだな。私にはこの解読システムがなかったのだわ。