毎週金曜日に通っていた歯医者も、今日で終わり。型を取った銀を右奥歯にかぶせる。今日の担当は、「髪を金色に染めたお姉さん」である。「飯島愛」風である。ちょっと不安がよぎる。でもまあ、銀をかぶせるだけだから問題はないだろう、と自分を安心させつつ、椅子に座る。
銀がかぶせられた。「はい、カチカチ噛んでみてください。どうですか?」……「あ、高いです」……「じゃ、ちょっと削りますね」
と、その瞬間、飯島愛は横になっている私の上におおいかぶさるようにして、向こう側にある「吸い取り器(ズズビズというやつ)」に手を伸ばした。この柔らかく、暖かいものは「飯島愛の胸」。笑気ガスよりも強力なトリップである。一瞬ではあったが。
「ウィーン。ゴリゴリゴリ」……「はい、今度はどうですか」……「まだ高いかな」……「じゃ、削ります」
2回目の「ウィーン。ゴリゴリゴリ」が始まったときに気がついた。私の右腕に感じられる、ソフトでウォームな感触は、再び「飯島愛の胸」ではないだろうか。トリップ。
「はい、これでどう?」……「あー、ほんのちょっと高いです」……「じゃ」
「ウィーン。ゴリゴリゴリ」。胸。トリップ。
「どう?」……「いいみたいです」
トリップ、終了。
歯医者をあとにして、私はかぶせられた歯をカチカチと吟味していた。「あれ? まだ高かったかな。まあ、いいか。ちょっと様子を見て、ダメだったらまた来たらいいわけだし」と、何となくうきうきした気分で考えていた。