「読ませてもらったけど、あれは、考察がちょっと違うんじゃないかな」
「とおっしゃいますと?」
「あの考察だと、すべての原因が学習者にあるように言っているけれども、学習者じゃなくて、教材が問題だったんじゃないのかな」
「いや、すべての原因が学習者にあるとは書いていません。それはインストラクショナル・デザインの哲学に反するものですから。うまくいった学習者と、いかなかった学習者のログをたどってみるとこのようなところに差があったということを記述しただけです」
「でも、延期のサイクルがドロップアウトを生んだと言っている」
「推測ですが」
「であれば、なぜ延期が生ずる前になんらかの介入をしないのか?」
「それはかなり微妙な問題です。なぜなら、延期しそうだからといってなんらかの介入をすれば、それは自己統制感を損なうことになるでしょう。それによって動機づけを低めるリスクがあります」
「自己統制感を損なわずに適切な介入を工夫することこそが実践研究ではないのかな?」
「は、はい。確かにそのとおりです」