KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

大学全入の時代へ

 大学入試のシーズンだ。確実に入学志願者の数が減っていることに気がつく。数字は正直である。コースによっては、競争率が1倍台のところもある。1.5倍以内のところは無試験で全員合格にしたらいいと思う。入学試験をするコストが省ける。国立大も独立行政法人化すれば、入学定員の緩和が行われるだろうから(確認はしていない)、これは夢物語ではない。大学全入の時代になって、初めて教育サービス機関としての大学の競争がスタートする。

 入試がなくなれば、合格することが目的なのではなく、入学してから知識や技能を身につけることが目的なのだということが明確になるだろう。また、入試がなくなって手持ちぶさたになった大学教員は、自分の授業の中で受講生の成果をきちんと測ることに目覚めるだろうから、自然に成績評価が適切になる。適切な評価が実施され、大学の卒業がところてん式ではなくなれば、卒業の意味も変わってくる。

 入試がある今でも、新入生の基礎学力の低下が問題になっているのだから、入試がなくなればその問題はますます深刻になるという予測が成り立つ。それは致し方ないところだろう。それを防ぐためにセンター試験を資格試験として使うという手もあるが、限界はある。そもそも全入を考えれば、資格試験としてもハードルを無限に低くして行かなくてはならない。

 しかし、そのときこそ教育サービス機関としての大学の力量が問われるときだろう。入試が厳しい時代では、入試の成績は良いが不本意なコースを選ばざるを得なかった意欲の低い学生が生まれた。一方、全入の時代になれば、基礎学力は低いけれども、自分でコースを決めてきた意欲の高い学生が生まれる。仕事としては、前者の学生を教える方が楽である。しかし、後者の学生に教えることほど教員のやりがいとなることはないだろう。良い時代になってきたのだ。