KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

サバティカル入りして2週間

2022年4月15日(金)

サバティカルに入って2週間が経ちました。大学院のゼミだけを担当すればいいというのはとても快適です。毎週の授業に追われることがない、そして会議がないというだけで自分の時間がたくさん取れます。授業がないことで学生とのコンタクトがなくなり、さみしくなるかなという予感もありましたけど、これも慣れてしまうでしょう。

1回目の学部のゼミだけは顔を見せることにしました。対面によるゼミが復活しました。やはりゼミは対面がいいですね。これで学生同士の交流も毎週できるでしょう。毎週1回決まったメンバーと顔を合わせるということは、実は所属感の土台になっていたのですね。

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・映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」

Netflixで「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(片渕須直, 2019)を見ました。「この世界のいくつもの片隅に」は劇場ですでに見ていたのだけれど、長尺版(2時間46分)という変化以上に、全く違う映画のようでした。すずさんがより一層深く描きこまれています。舞台の呉市には今年中に行こうと思っています。

https://ikutsumono-katasumini.jp

・益田ミリ著『47都道府県女ひとりで行ってみよう』

益田ミリ『47都道府県女ひとりで行ってみよう』(2011, 幻冬舎文庫)をある人から紹介されて読みました。ひと月に1箇所旅行して、数年かけて47都道府県を制覇しましたというエッセイ。

https://www.amazon.co.jp/dp/4344416600?tag=chiharunosite-22

どこに行ったとか、見どころとかいうのではなく、女一人旅の不自然さをどうにか誤魔化したいと悪戦苦闘する著者の姿を楽しむ文章ですね。でも、ここに行ってみようかなという気を起こさせるのが不思議な感覚でした。

女性の一人旅も著者が旅した2002年頃から比べると、今では全然不自然ではなくなっていますよね。

内容とは関係ないですけど、久しぶりに文庫本を読んで気づいたことがひとつありました。それは「文庫本は活字が小さすぎてもう読めないな」ということです。年齢によるものですけど、視力が落ちているので、小さい活字をたどるのが辛くなってきているのです。これからは、iPad版Kindleで読むようになるでしょう。これなら活字を大きくできますので。

・noteを始めて8年

noteから「noteを始めて8年」のバッジが届きました。もうそんなに経ったのですね。ブログを書くことはnote以前にも長い間してきましたけれども、noteは自分の文章を読んでもらうためのプラットホームとして革新的でした。この間たくさん使わせてもらってきました。シンプルなシステムからスタートして過度に複雑にならずに使いやすくなってきていると思います。これからもよろしくです。

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大学院ゼミをハイフレックス方式でスタート!

2022年4月11日(月)

大学院ゼミがスタートしました。サバティカル期間は博士課程のゼミだけを担当します。2年ぶりの早稲田キャンパスでの対面ゼミです。とはいえ教室に来たのは私を含め4人だけで、残りの参加者はZoomからです。対面とZoomの同時開催であるハイフレックス方式です。

土曜日なのでキャンパス内は人はまばらです。しかし、教室をのぞくと対面授業が復活していることがわかります。右手手前が3号館です。伝統的な門構えを保存しておいて、中はモダンで高層なビルになっています。どの学部からも使える共通教室が多く入っています。

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同じ空気を共有するって実はすごい。教室内は対面参加の4人だけなのに笑いが絶えません。2年分笑いました。リモートの人の方が多いとはいえ、ハイフレックスのゼミは雰囲気が格段に良くなる感じがします。おそらく教室の空気感をオンラインで伝えられているからだと思います。

ちなみに、今回のゼミの参加者数は、現役生が対面3、Zoom 5の計8人。そして、卒業生がZoomで6人参加しました。OB/OGがこれほどゼミに参加してくれるのは他にあまり例がないのではないかと思います。これは代々、卒業生のゼミ参加を歓迎する風土を作ってきたことによります。そのためにSlackを使って卒業生にゼミの情報を流しています。

ハイフレックスをやるときには、eMeetの会議用マイクスピーカーを使っています。これを使えば、教室内で各自のパソコンでZoomを開いたときに、ハウリングすることなく声をマイクで拾うことができます。これを2台連結して教室の2箇所に設置しています。ゼミくらいの規模であればこれで十分です。

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博士課程の新入生がひとりいますので、ゼミのあと、ささやかな歓迎会を開きました。早稲田キャンパス近くの「ママキムチ」です。お店がやっていてよかったです。コロナ禍でつぶれてしまったのではないかとみんなで心配していたからです。

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評価経済社会を生き延びるための「いいひと」戦略

2022年4月8日(金)

大学の生協食堂に行ったら、大勢の学生でにぎわっていました。本当に久しぶりですね、こうしたにぎわいを見るのは。いいですね〜。大学はワイワイガヤガヤしている場所であってほしいです。そう思いました。

さて、先週は岡田斗司夫の「評価経済社会」について紹介しました。

https://note.com/kogolab/n/n90335207c1ca

評価経済社会とは、評価と影響を交換し合う社会である。現代は貨幣経済社会から評価経済社会へと移行している。評価はお金に変わる(例:ディズニー)。しかし、お金だけでは評価を生み出すことはできない。これからの消費は単純にモノをお金で買うということではなく、自分の好きな対象を支えるというようなサポーター的なものになっていく。

評価経済社会の中での個人のふるまいの特徴は次の3点。
(1) 他人をその価値観で判断する
(2) 価値観を共有する者同士がグループを形成する
(3) 個人の中で複数の価値観をコーディネートする

では、このような評価経済社会の中で人がサバイバルしていくためにはどのような戦略が有利でしょうか。岡田斗司夫は、それは「いいひと」というキャラクターを演じることだと『超情報化社会におけるサバイバル術:「いいひと」戦略』の中で主張します。その内容を紹介します。

岡田斗司夫『超情報化社会におけるサバイバル術:「いいひと」戦略』(株式会社ロケット, 2014)

https://www.amazon.co.jp/dp/B00LUWUINQ?tag=chiharunosite-22

Googleやfacebookで求める人材について聞いてみると、それはすごいスキルを持った超天才ではなく「Good natured person」だという。つまり「いいひと」だ。単にスキルが高い人は外注で契約すればいい。その一方、本社に置いておくべき人は、まわりの人の仕事のじゃまをせず、楽しく協力しあえるグッド・ネイチャード・パーソンだというわけだ。

「いいひと」の特徴は、他人に親切、何を言われても心が折れない、うまく人を褒めてやる気にさせる、もめごとを起こさず仲良く付き合える、他人の失敗や非礼を許す、などだ。こうしたキャラを演じることがますます重要になってきている。

私たちが仕事をしていて使うエネルギーの大部分は対人関係で消費される。攻撃されないように慎重に発言したり、必要以上にお礼を言ったり、行きたくない飲み会に行くなどの高いコミュニケーション・コストを支払っている。

古代の日本や中国は評価社会をベースとした人格者文明だった。徳や人格を保証するものとして家柄や身分が重んじられた。現代は、再び人格者文明に入りつつある。しかし、それはハイパー情報化社会によって誕生した評価経済社会をベースとしたものだ。

オンライン・コミュニティは3つのC、つまり、コンテンツ(Content)、コミュニティ(Community)、キャラクター(Character)によって成立する。この中でコンテンツはキャラクターとコミュニティによって作り出されたものであり、あくまでも収穫物にすぎない。コンテンツは情報化社会の中にあってはどんどん無料に近づく。3つのCの仕組みは古くはプラトンのアカデメイアや江戸時代の適塾と同型である。

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このように現代では「いいひと」を演じることが重要なスキルになっています。でも、そんなことを続けていたら「本当の自分」を失ってしまうのではないかという不安もありますよね。そのような「近代的自我」というのは実はもともとないのだ、という立場をとることもできます。それでも「ここからは(誰も知らない)本当の私」と呼ぶべき領域を守りたい人はいるでしょう。

そこで最後の「スマートノート」に連結して3部作が完成します。この最後の本についてはまた別の機会に紹介します。