KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

三輪和久さん/J. R. Anderson

 先週の土曜日(98.7.18)、ある学会の編集委員会に出席した。三輪さんがこの編集委員会に入っているということは知っていたので、いつかは会えると思っていたが今回の会議がそうであった。それで、委員会が終わると「コーヒーでも」といっておしゃべりにつきあってもらった。

 三輪さんはアメリカで J. R. Anderson のところにいたそうだ。アンダーソンといえば認知心理学をやっている者にとっては偉大な人である。プロダクション・システムによって作られた認知モデルのACT(Adaptive Control of Thought)が有名だ。三輪さんの話によると、アンダーソンは、最初はモデル化や実験システムを中心とした研究を続けていたのだが、最近ではそれではグラントが取りにくくなったので、教育の実用システムに方向を変えているそうだ。アメリカの研究のやり方は、でかいグラントをとって、テクニシャン、プログラマ、セクレタリーなどたくさんの人を雇って成果をあげるというシステマティックなものだ。これは私がアメリカに行って来たときに感じたことと同じである。

 私が実践しているPSI方式による授業や、教材の電子化・Web化ということについてもいくつかの示唆をもらった。ひとつは、できた教材をいろいろな学校で使ってもらうということだ。もちろんただでである。そして、その教材が使われているときのログデータをどこかに蓄積しておくという仕掛けを裏で動かしておくのである。一通り終わったらそのログデータを回収するか、あるいは送ってもらう。それが教材をただで使うことのお礼になる。実際、アンダーソンのグループではLISPチューターという教育プログラムを開発して、それをあらゆるところに配布して、その膨大なログデータをその見返りとして得ているということだ。日本でもこういうやり方を工夫しなくてはいけないだろう。