JICA(国際協力事業団)からメールが来た。
——へえ、最近はいろんなところからメールが来るんだな。また、タイに行ってほしいという話かい?
いや、今度はサウジアラビアだ。サウジアラビアに行って、コンピュータ教育について教えて欲しいという話。期間は2ヶ月間。今年度中に。
——今年度中か。それは急ぎの話だな。メールで来るわけだ。で、行くのかい?
うーん。アラブの国はまだ行ったことがなかったので、好奇心はあるんだけどね。なんせ、二人目の子供の予定日が12月なのだよ。奥様にも相談したんだけど、やはり今年度中というのはちょっと厳しいかな。もう少し子供が大きくなっていればいいんだけど。
——予定日が12月か。それはちょっとね。12月は出張禁止令が出ているしね。どうするの?
うーん、残念だけど、今回は見送るつもり。まあ、またいつかチャンスが巡ってくるでしょう。
——チャンスか。君は旅行が嫌いなくせに、そういうのはなんだか積極的だなあ。
なんでだろうね。外国に行けばいったで、すぐに家や日本が恋しくなるのにね。なんでか外国に暮らしたいという欲求がある。異国の地に暮らして、そこの人々と日常をともにしたいという気がする。旅行はあまりしたくないんだけど、暮らすならいいかな、と思う。
——変なやつだなあ。
きっと、自分の家が恋しくなる気持ちを味わいたいのかなと思う。だって、ずっと自分の家にいたら恋しいという気持ちが起こらないでしょ。外に長く暮らしてみて自分の住んでいた家や土地が恋しいという気持ちになる。その気持ちを時々味わいたいんじゃないか、と思ったりする。