KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

溝上慎一『現代大学生論』

現代大学生論 ~ユニバーシティ・ブルーの風に揺れる (NHKブックス)

現代大学生論 ~ユニバーシティ・ブルーの風に揺れる (NHKブックス)

エリクソンアイデンティティ論は、インサイド・アウトであった。自分の中にやりたいことや将来の目標のイメージがあって、それを外のコミュニティに探し、見いだしていくという生き方だ。

1990年代以降は、これを実行することが難しくなってきている。原因の1つは、生き方が情報化していることで、青年は情報から生き方の理想を見いだすが、それを実行することが難しくなっている。もうひとつは、自分の好きなこと、つまり趣味の延長上に職業世界を見いだそうとしている傾向。それは悪いことではないが、趣味と職業世界の間はたいてい不連続である。

今の大学生の生活はシステム化、あるいはモジュール化されている。学業、就職、バイト、サークル、恋愛、テレビ、遊び、ゲーム、ボランティアなど。これらのどれかでもおろそかにすることは、その総体として成立していると感じている「私」をおろそかにしてしまうことなのだ。その中で、自分の将来について割ける時間は限定されたものになってしまう。

一方で、旧タイプのアウトサイド・インの生き方(学歴トラックによる職業選択)を選ぶ学生もいる(とりわけ一流大学)。どちらがよいとも言えない。インサイド・アウトでは、行動が重要であること、アウトサイド・インでは、外から課せられた仕事に対して自分なりの見通しを立てることが重要だろう。