フィンランド国語教科書小学4年生―フィンランド・メソッド 5つの基本が学べる
- 作者: メルヴィバレ,リトバコスキパー,マルックトッリマン,北川達夫,フィンランドメソッド普及会
- 出版社/メーカー: 経済界
- 発売日: 2005/11/24
- メディア: 大型本
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この問題に答えはありません。そして、この問題こそ、われわれの国語教科書の真髄を示すものです。国語教科書の最大の目的は『生徒に考えさせること』であって、『答えを見つけ出すこと』ではないからです。
2003年のPISA調査で、読解1位、科学1位、数学2位になったフィンランド(2000年調査でも読解は1位)の教育の秘密がこの本でわかる。
この小学校4年向けの国語の教科書は本当にすばらしい。
一冊の全体が一貫した登場人物とストーリーによって組まれている。日本の教科書のようにつぎはぎではない。この翻訳では一部の素材が著作権の関係で翻訳されなかったが、逆にいえば、本文の素材の大部分がこの教科書のための書き下ろしということである。日本の教科書のようにさまざまな出典から一部を持ってくるということはしていない。このようにして教科書全体を一貫性のある形でデザインできた。
たとえば、物語「カラスのチーズ」は、チーズをくすねたカラスが、キツネにうまくだまされてチーズを落としてしまうというイソップ風の寓話だが、書き下ろしだろう(出典がないため)。その単元では、「この物語を手本にして自分で物語を書いてみよう」、「この物語は何を教えてくれていますか」などが課題として出されている。説明文「犬」では、文章の中のどこが意見で、どこが事実かという区別をさせたり、各段落について質問を考えさせる(文章の中に答えがあるような質問)ことが課題として出されている。
単元の中には、マインドマップを描かせるものもあるし、テスト勉強のやり方を扱うものもある。また、マンガについての解説もある。話し合いのやり方やスピーチの仕方、電子メールの書き方も扱っている。
古典や定番の文章が収録されていないことを問題視する人もいるかもしれないが、推薦図書という形で、本の紹介がされており、自然な形で読書活動に導いている。
けっして厚くはない教科書だが、内容の的確性(目標とする「考えさせる」ということに合致している)と課題設定のバリエーションから、授業の時間は余ることはないだろう。この教科書を手にすれば、教師も教え方が変わるはずだ。
さらに興味を持った人は、訳者が書いた『フィンランド・メソッド入門』もお勧め。
- 作者: 北川達夫,フィンランドメソッド普及会
- 出版社/メーカー: 経済界
- 発売日: 2005/10
- メディア: 単行本
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