ケータイは世の中を変える―携帯電話先進国フィンランドのモバイル文化
- 作者: T.コポマー,Timo Kopomaa,川浦康至,溝渕佐知,山田隆,森祐治
- 出版社/メーカー: 北大路書房
- 発売日: 2004/09
- メディア: 単行本
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ケータイは、公共空間に居合わせる人々の『瞬間』を相互に結びつけるハブという新たな役割を担っている。すなわち、自宅でも職場でもない、第三の空間を生み出す。
ケータイの利用は一種の反復行為といえ、利用者をいつもつながっていたいという気持ちにさせる。中毒者はアクセスの継続性、つまり自分が通信圏外か否かをたえず心配している。
ケータイネットワークは、実際の物理的な近さとは無関係に、近くにいるという感覚(テレプレゼンス)を利用者にもたらす。……だれも電話をしてきたりメッセージを送ってこないとき、ケータイ利用者の孤独感は強いに違いない。
ケータイ利用者は、もはや正確な時間についてあらかじめ決めておく必要はないと感じている。時間にとらわれないライフスタイルが広まりつつある。
若者がテキストメッセージを交わすのは、メッセージの到着でその時の行動が中断されたとしても、それが楽しいからだろう。メッセージは陽気な求愛ダンスのように行き来し、電話機は新しいメッセージが着くたびに到着の合図として着信音を出す。
数年前、モダニズム社会学のジグムント・バウマンは世界の遊牧民化について述べているが、彼はケータイによる新たな文化の成立を予言していたとしか思えない。
都市生活とは、食糧を確保するために自然と闘うことではなく、人間同士の争いである。勝利は人間を支配することであって、自然を支配することではない。人間は情報を収集、処理する存在とみなされるようになり、新たな課題をつきつけられている。私たちは人間関係で勝敗が計られるゲームの参加者である。この役割において、現代人は旧石器時代の祖先同様、遊牧民的である。ケータイはすべての遊牧民に感情や気分の変化に対応した相互作用状況の成立を可能にしている。