ときどき思うんだけどね。
——何よ、いきなり。
君は男? それとも女?
——どっちでもいいじゃない。
どうも気になる。話し相手が男か女かで、話し方が変わってくるじゃない。
——それこそステレオタイプだな。男だろうが女だろうがわかりやすい話はわかりやすい。論理的な話は論理的。非論理的な話は非論理的だ。聞き手の性別に関係ないと思うよ。
ああ、そうか。そうだね。じゃあ。
——おい、それで終わりかい。
今日は忙しかったんで、あまりしゃべることがないんだよ。
——へえ、あなたが「忙しい」なんて単語を使うのは珍しい。
忙しいというよりも、心に余裕がないといったほうが正確かな。これはいっぺんにいくつもの仕事が並行しているときになるんだね。人間はひとつずつの仕事しかこなせないのに、それが時期的に重なっているようなとき。
——そのためにゼミ生に手伝ってもらっているんでしょ?
そう。ゼミ生には感謝している。その仕事が彼らの卒論に直結しているのだから、がんばらざるをえないんだけど。
——大変なゼミを選んだもんだ。同情するね。
見ていて気がつくのは、先を読んで仕事をする人とそれができない人がいることだね。先を読んでやっていくひとは次に何をすべきかを考えている。わからないときには私のところに聞きに来る。でも先を読まない人は、何もしないね。言われるまで、やらない。で、私が気がつく頃には手遅れなんだな。
——手遅れにならないように目配りするのがあなたの仕事だろう。
手厳しいなあ。嫌われるぞ。
——人工知能は嫌われようが恨まれようが、気にならないのだ。なはは。そう、言わせてもらえば、あなたがまず先を読んで仕事をすることだな。
ええい、もう電源切るぞ。