県知事に会ってきたよ。
……へえ。そりゃまたどうして。
富山県高等教育振興財団というのがあって、それに助成金を申請していたのが採択された。
……科研費が連戦連敗の君にとってはありがたい話だ。
助成額は大きくはないんだけれど、割と柔軟に使えるので本当にありがたい。で、同じように助成が決まった全8名がそろって、県庁で交付式をしたというわけだ。
……様子はどうだった?
形式だけのものかと思ったら、研究の概要を簡単に話して、それに対して中沖知事が質問をして、会話するという実質的なものだったので、ちょっと驚いた。知事は形式張ったところもなく、実にいい感じだった。理系文系のさまざまな研究テーマが集まったんだけど、好奇心旺盛にいろいろ聞いていたね。
……君のテーマは?
大学の新入生教育をどうするかというテーマね。言語表現とか情報処理教育の話。
……知事は分かってくれたかい?
案の定、大学生の表現能力という話になったんだけど、知事は「あいさつをしっかり教えて欲しい」といっていたね。でもね、僕は今の大学生があいさつがあまりできていないとは感じていないんだ。それどころか、「先生、おはようございます!」ときっちりあいさつしてくる学生が多い。それに対して私の方が「うっす」とかなんとかもごもごいっているくらいなんだよ。
……ははは。あいさつは先手必勝だもんな。
ひとつ思ったことは、大学の先生というのはたくさんいて、それぞれに研究をしているわけなんだけど、行政とのコンタクトは少ない。そこで、こういう助成金のシステムというのは、行政とアカデミズムとの接触を促進する機会として働いているんじゃないかということ。つまり行政の方としても学問の世界の人々にいろいろ頼みたいことがあるわけで、そのためのパイプとしてこういう機会はりようできるんじゃないかな。まあ、こちらとしても助成金をもらっているのだから、何か役立てることがあれば協力したいということだから。