KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

マインド・コントロールの予防接種

 Shiroさんが「マインド・コントロールの実際」として、11/15の日記に書いている。ライフスペースの問題に関連してのことだが、マインド・コントロールは普遍的な技術であり、新宗教自己啓発セミナーとは分けて考えることが必要と言っている。どんな技術もそうだが、それを使う人によって、良い使い方もできれば、同様に悪用もできるわけだ(使う本人は良い使い方だと信じている場合も含む)。しかし、マインド・コントロール技術は、その技術を使うことについての善悪を判断する本人の世界観をまるっきり変えてしまうので、問題がさらにやっかいなのだ。

 古い日記を探してみたら、去年の9/23の日記に「自己啓発セミナー」と題して、X-JAPANのTOSHIという人がセミナーにはまったという話題を書いていた。ちなみに、このとき掲示板にいただいた反響で、ゴリさんが、セミナーにはまった人を救い出すにはまず理解を示すという戦略に対して、「でも、そんなことしたらミイラ取りがミイラになりそうで怖いです」と書いているのだが、今読むとあまりに暗示的で恐ろしいくらいである。

 我々がそれによってたって判断をすると考えられる「世界観(スキーマ)」をまったく新しく構築する技術がマインド・コントロールといえる。そのためには、すでに持っている古い常識や世間や家族を捨て去るというプロセスが必要なのだが、それを実現するためにさまざまなテクニックが利用される。

 それではマインド・コントロールにかからない方法や、マインド・コントロール下にある人を「こちらの世界」に連れ戻す方法はあるのだろうか。Shiroさんはそれは難しいと言う。説得しようとしても、彼らには論理的思考力は元のまま残っているどころか、そのことについて深く考えた結果、普通の人よりも論理的であったりする。普通の人は世界や人間がどのようにして成り立っているかということを深く考えたりしない。したがって、まだマインド・コントロールされていない人がそれに近寄らない以上の予防策はない。

 もう一つの予防策は私たちがマインド・コントロールの技術についての知識を備えるということだろう。学校で教えるとすれば、心理学はその役割を負っているのではないだろうか。もともとマインド・コントロール技術のいくつかは人間性心理学やヒューマン・ポテンシャル運動を源流に持っている。

 小学校でリラクセーションテクニックを教える試みをしているところがあるが、自分の心身を自分でコントロールする技術を身に付けるという意味で、マインド・コントロールに対する抵抗力を増すことになるだろう。社会心理学で明らかにされている集団心理のメカニズムやリスキーシフト現象(集団で意思決定をすると極端な方にずれる)を学ぶことによって、パーティ商法などのからくりを見破ることができる。

 マインド・コントロールのテクニックについては別冊宝島やいくつかの本で明らかにされているが、そうした知識を備えることは抵抗力をつけることになるだろう。しかし本で読むのと実際に体験するのではまったく違うというのも事実である。マインド・コントロール技術を安全な環境で体験しておくこと、それは一種の心理的な予防接種になるとおもうのだが、そうした実習が必要になっているような気がする。