KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

EUの言語問題

 大学は4日から開いていたのだが、昨日までバレーボール大会のために体育館が占有されていた。それで今日がバドミントンの打ち初め。打ち納めが12月28日だったから一週間以上のあいだ運動不足であった。久しぶりに汗をかいて、いい気持ち。よく眠れそう。おっとその前に日記を書く。

 今日の読売新聞にこんな記事。「EU悩ます言語対策---拡大すれば公用語最大23に」という見出しで、EUの通訳・翻訳にかかるコストが莫大なものであることを伝えている。

 現在のEU加盟国は11カ国で、すべての言語の組合せは110通りになる。それを支える通訳・翻訳のスタッフは約3500人だそうだ。EUが拡大して加盟国が23カ国になれば、その言語の組合せは500以上(正確には23*22=506通り)になる。とてもこれには対応できそうにないので、機軸言語として英語を使おうというプランがあるとのこと。

 しかし、この案にはイギリス以外の国の抵抗が強いだろう。とりわけフランスなどは。国連公用語は6つの言語だが、それでもすべてのドキュメントを6言語で作成するのは大変なので、作業言語としていくつかの言語を限定して使っているということを読んだことがある。

 共通の通貨を決めることの何倍もの困難が言語問題につきまとう。特定の言語を使うということが人間の重要な権利だからだ。だからどの国も譲れない。機軸言語を英語に決めるよりは、エスペラントを機軸言語に採用する方が抵抗は少ないだろう。エスペラントはどこの国のものでもないからだ。しかし、だからこそ逆にどこの国からも支持されないということもある。合理的な精神を働かせれば、選択肢は限定されていると思うのだが。

 フランスという国は面白い。フランス語を一生懸命になって世界に広げようとしている国だ。しかし、一方で世界無民族主義協会(SAT= Sennacieca Asocio Tutmonda)という急進的なエスペランチストの団体があったりする。オランダのロッテルダムには、世界のエスペラント運動のトップである世界エスペラント協会(UEA=Universala Esperanto-Asocio)の本部がある。EUの機軸言語にエスペラントを採用するように働きかけることもできるだろう。

 エスペラントという選択肢を消して考えてみる。

 機軸言語をひとつ、あるいは2、3個決めるということは避けられないだろう。その場合、機軸言語から他の言語への同時通訳にかかるコスト、そしてドキュメントの翻訳にかかるコストは、その機軸言語の国が払うというのが合理的なのではないか。EUの機軸言語という地位を得る代わりに金を払うというのは無理のない取引だ。しかし、そんなことを決めたら、自分の言語を機軸にしてほしいという国は出てこないかもしれない。