KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

クリニカル・エビデンス

最近、クリニカル・エビデンスという概念が医学界ではやっているようで、そういう本が出ている。これまで「勘と経験」で医療をしてきたが、それではいけないというので、治療の効果を科学的に測定して、有効な治療とそうでない治療とを区別していこうというわけだ。もともとはイギリスの開業医さんたちの間ではじまったもののようだが、いかにもイギリス医学的な考え方だと思う。

 今日はお医者さんをする日で、患者さんが切れた時間があったので、机の上にあった『クリニカル・エビデンス』(日経BP社)を読んでいた。たまたま開いたページが「慢性疲労症候群」だった。これは、慢性的な病的疲労感・筋骨格系の痛み・不眠・頭痛などを主症状とする原因不明の疾患で、精神疾患のようでもあり、免疫疾患のようでもあり、感染症のようでもあり、わけのわからない病気だ。これに対して「有益である」と証明されている治療は「運動」と「心理療法」、「有益性不明」の治療は「坑うつ剤」と「副腎皮質ステロイド剤」と「ビタミン剤」、「有益性に乏しい」と証明されている治療は「長期の安静」だという。これは面白い。第一に、いかなる薬も有益性を証明されていない。薬の嫌いな心理療法家としては、いい気味だと思う。第二に、疲労しているのに、安静よりも運動が効くことだ。

教育でもこういうことがまとめられるといいのに。