- 作者: 無藤隆,南博文,麻生武,やまだようこ,サトウタツヤ
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2004/09/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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質的研究法の全体と細部を知るのに最適な一冊。以下メモ。
- 質的研究は、文脈依存的でローカルな現実に密着するものであるが、「個性記述」だけではなく一般化を目指す。少数事例とていねいにつきあうとはいっても、その背後には多様な事例が蓄積されているべきだ。
- トゥールミンは、近代科学が機能不全に陥っているとし、これからは、「口述するもの、特殊なもの、地域的なもの、時間的なもの」へ回帰するとしている。
- 心理学的測定法の信頼性が安定性を目指すのに対して、質的研究では、変化自体が重要な研究対象であり、また、複数の視点からの観察も、求めるのは一貫性ではなく、差異を検出する方法であり、そうした差異から深い理解が生まれるとする。
- 理論的サンプルとは、平均ではなく「典型例」である。研究が進むにつれて、特定の概念が仮説としてでてくれば、今度はその概念に関連するようなサンプルを探す。最後には、その概念を検証するようなサンプルを探す。
- アクションリサーチとは、変化を試みてその次に何が起こるかを見る方法。「現場の状況分析→変化のためのプラン→仮説検証のための実践→評価と省察→理論の照合と一般化」というステップ。【デザイン実験と同型】
- 質的研究ではデータの量が膨大になる。都合の良い部分を抜き出したのではなく、何らかの公平な方法によってデータを凝縮しているということを示すことが必要。KJ法による図解化はその手段となりうる。
- 一番大事なのは、現時点で最も納得のいくストーリーを書くということである。それはかつて経験してきたことを再構造化、再生することだ。固定化された大きな物語は、解釈の更新をいつも秘めている「小さな物語」にとってかえられるべきである。