- 作者: ドナルド・A.ノーマン,岡本明,安村通晃,伊賀聡一郎,上野晶子
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 2004/10/15
- メディア: 単行本
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以前(http://d.hatena.ne.jp/kogo/20050409)、テレビ番組「Qさま」の「ビビリ橋」について書いたが、ノーマン先生はすでにこの本でアイデアを披露していた。番組関係者はこの本を読んでいたに違いない。
簡単な例を見てみよう。長さ10メートル、幅1メートルの細長い板があるとしよう。それを地面に置く。その上を歩けるだろうか。もちろん。その上で飛んだり跳ねたり、踊ったり、さらには目をつぶっても歩けるだろう。さて、その板に支柱をかって、3メートルの高さに持ち上げてみよう。その上を歩けるだろうか。ずっと注意が必要だが、歩ける。/上空100メートルに板があったらどうだろう。ほとんどの人はそこに行く勇気すらないだろう。歩くのとバランスをとる難しさは板が地面の上にある時とほとんど変わらないはずなのに。
この現象をノーマン先生は次のように説明する。
行動をコントロールするのは、自動的な、低位の本能レベルである。ほとんどの人にとっては、本能レベルの方が勝つ。つまり、恐怖が支配してしまう。……感情システムは意識的な考えとは独立に働く。
というわけで、この本は情動がデザインのなかで果たす役割について多くのアイデアを与えてくれる。
1980年代に『誰のためのデザイン?』を書いていたとき、私は情動を考慮に入れていなかった。悪いデザインに対して怒っていたというのに、すべては論理的で、冷静なやり方で、役に立つこと、使いやすいこと、機能、形態などに取り組んでいた。だが今、私は考えを変えた。なぜか。科学の進歩によって、脳に対する理解、情動と認知がいかに緊密に絡み合っているかについての理解が進んだこともその一因である。
教育のなかでも情動的な側面は重要だ。むしろ情動と理性は一体だという全体論を採るなら、こうした見方の方が自然であり、妥当性が高いとも言える。
学生は、動機づけられているとき、何かに関心があるときに最もよく学ぶ。情動的に関わり、そのテーマに興奮して引き込まれることが必要だ。これが、例や、図やイラスト、ビデオやアニメが威力を発揮する理由である。普通退屈でうんざりするようなトピックだと思われるものでも、学習が退屈でうんざりする演習である必要はない。どんなトピックもわくわくするものにできるし、どんなトピックも誰かの情動を呼び起こすのであるから、皆をわくわくさせない手はない。