昨日、大学卒業生の就職のことについて書いた。たまたま手元に「@Work」という雑誌の創刊号が届いていた。この雑誌は日本労働研究機構(JIL)が出しているものだ。以前共同研究をしたよしみで、送ってくれたのだろう。その中の「若者と仕事」(本田由紀)という記事に目が止まった。
その記事によると、昨日取り上げたような卒業生と就職の問題は「学校から職業への移行」と呼ばれていて、世界的にも重要な研究課題になっているとのことだ。卒業してもうまく就職できない場合、それは若年失業率という数字になって表れる。この数字は、英米カナダでは10%台、フランスでは20%、イタリアでは30%を越えるという。それに対して日本では10%以下である。
就職氷河期と言われながらも、欧米に比べて日本の若年失業率は低く押さえられている。この原因は、学校と企業とができるだけ協力しあって、隙間をなくし、若者を受け渡すシステムが作られてきたことによるという。これに対して欧米では若年失業が問題になっても、個々人がそれぞれの働き口を見つけるというプロセスには、学校組織の介入は意外なほど見られない。
筆者は、日本では職場への定着率が高いけれども、同時に職場への不満も大きいということを指摘する。それは、欧米では、離転職率が高いと同時に、現在の職場への満足度が高いことと、対比をなしている。つまり、日本は「定着・不満」型であり、欧米は「流動・満足」型であるという。
これを、職場定着率を横軸に、職場満足度を縦軸にとって分類してみると下のようになる。欧米の中では、ドイツは例外的に「定着・満足」型といえるが、これは徒弟制度がうまく働いていることによる。
このことはおそらくいいことだろう。ぶつぶつと文句を言いながらも今の職場から飛び出せないように見える「定着・不満」型モデルは若者にとっては魅力のないパターンになっている。
しかし気になるのは、もし自分の夢を追求するのであれば、それは自分の能力や技能を元手にしていかなくてはかなわないということだ。そして、統計が明確に示しているのだが、日本の学校というのは、能力や職業に役立つスキルを身につけたり、自分の可能性をのばす場としては、世界でも最低レベルの評価なのだ。もし大学までの間に自分に元手となるような能力と技能が身につけられないとしたら、夢を追うことは夢だけで終わってしまうという確率が高い。