KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

今井むつみ・野島久雄『人が学ぶということ』

人が学ぶということ―認知学習論からの視点

人が学ぶということ―認知学習論からの視点

さまざまな分野での熟達課程を研究しているエリクソンは「10年修行の法則」を提唱している。彼によれば国際的に活躍できるレベルの熟達を得るにはどんな分野においても最低10年間は集中した日々の練習が欠かせない。

エリクソンたちによればさまざまな領域を通じて一流の熟達者は平均して4時間ほどの集中した練習をほとんど毎日休むことなく行っている。

三宅なほみはコラボレーションの効果として、一人より二人で問題を解いた方が正解に到達しやすくなる、一人より二人で考えた方が深い理解に達することがあるということをあげている。そして、その理由として、

  • 集団状況では個々の人が何を考えたのかを説明する必要があるため、内的プロセスを外言しやすくなる
  • そこで外言化されたことに対して参加するメンバーは意識的な再吟味を行いやすくなる
  • 他者の発言に対しての再吟味がなされることによって、批判的な視点や新たな観点を得ることが可能になり、理解の深まりにつながりやすくなる

もちろん複数で学ぶことが負の効果をもたらすこともある

  • (1)共通の目標が欠けているとき
  • (2)手抜き効果
  • (3)同種の人だけのコラボレーション

創生的な学習のキーワードは生きた知識の学習、文脈に埋め込まれた学習、そしてコラボレーションによる学習、である。

IDの土台として、行動分析学認知心理学、状況的学習論を考えるということを主張してきたが、この本はその中の認知心理学(=認知的学習論)をカバーするものとして最適な一冊だ。認知的学習論の具体的な成果としての教材である、ジャスパープロジェクトもこの観点から詳細に検討されている。

ノーマン先生の5000時間仮説をより詳細にした、エリクソンの10年修行の法則は覚えておこう。毎日4時間で10年間だと、15,000時間弱になる。

なお、この本専用のていねいなWebサイトがある。http://www.coglearning.com/