KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

発表セッションの様子

AERA4日目である。空はくっきり晴れ上がり、シカゴにも春が来たという感じ。シャツ一枚でも外を歩ける。学会は明日までだが、出版社の出店は今日で店じまいである。最終日なので、本の半額セールもやっていて、けっこうにぎわっている。私は各出版社のブースを回り、本を手に取ってみながら、割引注文書とカタログを集めた。割引注文書はSAGE出版を除き、大体4月末くらいまでは有効なので、日本に帰ってから発注しようというわけである。

発表セッションの様子

午後はセッションを聞いた。その様子を記述しよう。電子コミュニケーション(電子メールやニュースグループ、CUSeeMeなど)を授業に活用するというセッションに出てみた。1時間半のセッションで、発表者は4人。一人当たり15分くらいの発表時間である。参加者は50人くらいで男女半々である。女性の活躍がめざましく、発表者はひとつめが、女性二人、ふたつめが男女各一人、みっつめが女性一人、よっつめが男性一人であった。また司会者は女性であった。

ひとつめの発表は授業でインターネットのチャットを活用したという実践例。話しのトピックを明示することや、一つの話題が終わったら、ピリオドを三つ打つなどの工夫が有効だとのこと。これはOHPまったくなしの話しだけの発表。数量的データもなし。

ふたつめは、電子ミュニケーションの利用によって、教育の伝統的デザイン(手段・目的)からepistemological(よくわからない)へのシフトが起こり、タスクにフィットしたよりよい技術の使い方が大切になると。OHPは5枚提示。数量データなし。

みっつめは、おそらく博士論文のテーマの発表で、ディスカッション・グループのモデレータを対象にしたサーベイをしたと。サンプルは100。サーベイの割には、OHPの提示なしで、従ってデータの提示もなし。詳しくは自分のペーパーを見てくれということか。

最後は、理科の領域で、プロジェクトベースの学習を試みたというもの。ユードラ、ニュースウォッチャー、それから独自のCoVis Collaboration Notebookというソフトを利用して、9-12学年の280人の学生を対象にした。これはOHPがたくさん提示され、よく内容が分かった。分析には(分析について言及したのはこの発表だけだった)量的・質的のミックスした方法をつかった。メールやニュースをどれくらい書いたかという量と、個人的変数---ソフトを使うスキル、コンピュータ経験、書くことへの不安、親の影響、勉学についての自己概念、性別、など---との相関分析をしていた。ニュースへの投稿量と書く事への不安との変数間に負の相関があったというのが面白い結果だといっていた。この研究と似た研究を私もやっているのでなかなか楽しかった。と同時に、私の研究もけっこうまんざらではないかもしれない、とうぬぼれを抱いたりした。

最初の二つの発表は、こぞって自分の研究はConstructivist approachである、と言っていた。全体として、構成主義の流行はアメリカでは強力で、これを言わないとプロポーザルも通らないという感じだ。鈴木さんによれば、現場ではこの流行はすごいが、研究者は意外に冷静に見ているとのことだ(これは日本では逆の現象になっているのではないか)。「構成主義」ということもここでは自分の研究を通用させるための道具やキャッチフレーズであるのかもしれない。というのも、アメリカにいると、「理論」でさえも一つの商品(実際にそうなりうる)であるような感じがしてくるのだ。また逆に、商品となり、実際に役に立たなくては理論の存在価値はない、ということなのかもしれない。

発表の後、質問した3人のうち二人は女性であった。そこでもSocial constructivist communityというのがキーワードで出てきた。最後に、「残りはVirtual meetingで続けましょう」ということばで締めくくられた。

シンポジウムの様子

この後、シンポジウムDesign and development of learning environments in support of life-long learningに出てみた。司会者にKozma(SRI)、発表者に、鈴木さんの先生のWager(FSU)さんやWinn(ワシントン大学)、指定討論にReigeluth(インディアナ大学)という、教育工学の雑誌や本でよく見る名前のそうそうたる面子である(しかしみんな若々しい)。その割には聴衆は50人程度で、会場が300人ははいるという広いものだったので、ちょっとミスマッチだったと司会も言っていた。

さすがにこの発表はマックとプロジェクタを使った見栄えのするものであった。WagerさんはOHPシートを使っていたが、マックの調子が悪かったのだそうだ。

ここでもキーワードは、Reflectionであったり、EngageするためのAuthenticityであったりする。やはりこれが一番ホットな話題なのだろう。

鈴木さん、市川君とお別れ

シンポのあと、Wagerさんと鈴木さん、市川君とでリブのうまい店にいった。紹介通りうまかった。鈴木さんと市川君は明日の朝、日本に帰国する。鈴木さんは、しきりに日本にたまっているはずの仕事のことをぼやいていた。がんばってください(まあ、他人事ではないのだが、私の帰国はまだ先だ)。

鈴木さんには本当にいろいろとお世話になった。怠け者の私たちにはハードすぎるところもあったが、一緒にいなければできない体験もたくさんあった。この場を借りて心からお礼をいいたい。