富山では自動車の生活なので、電車にはめったに乗らない。たまに東京に来ると、電車の中の会話が楽しめる。
吊革につかまった私の斜め後ろに立っていたカップルの会話。
女「ねえ、動物占いって知ってる?」
男「えー、知らない。なに、なに、それ?」
女「私もよく知らないんだけど、すごく当たるんだって」
男「それって、好きな動物を言うと、その人の性格がわかったりするやつ?」
女「うんうん、たぶんそうだよ」
男「…オレ、馬って言われたこと、ある」
女「えっ?」
男「オレ、馬って言われたことがあるよ」
女「…それって、性格じゃなくって…外見のことじゃない?」
そこまで聞いた私はすばやく、電車の窓を鏡にして男の顔を盗み見た。……馬。
男「外見…。あははは、そうだよなあ」
女「そうだよ、きっと」
女というのはなぜこんなに冷酷なことをサラリと言えるのだろうか。とはいえ、笑いをこらえるのに必死だった私。