KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

宇田光『大学講義の改革』

大学講義の改革―BRD方式の提案

大学講義の改革―BRD方式の提案

大学教育学会の大会で宇田先生にお会いしたので、最近出版されたというこの本をおねだりしました。そうしたら献本いただきました。ありがとうございます。

「当日レポート方式」(BRD=Brief Report of the Day)を使った大学授業実践の本です。A4紙1枚のレポートを90分の授業の中で書かせてしまおうという力業ですが、その実際とコツを詳細に語っています。BRD授業の典型例は、今日のテーマを確かめる(5分)→教科書などを参照して構想を練る(20分)→他学生の構想を聞いたり、教師の説明を聞いて情報収集する(45分)→レポートを完成させる(20分)という手順です。

ちなみに、私が学会で「大福帳」などの発表ポスターを貼っていると、たいてい宇田先生がBRDの発表をしていたりするので(大学授業の研究として近いので)、自然に仲良しになったという経緯があります。

さて、BRD方式のポイントは、一コマの授業全体が自分のレポートを完成させるという目標によって再体制化されるということでしょう。これによって、教科書は構想のための参考書、教員はレポートをよくするためのリソース、私はレポートを主体的に書く人という役回りに変換されるわけです。一コマの半分以上を書くための時間に当てるということで、授業内容によっては制約はかかるでしょうが、斬新な方法です。

アメリカでは、早くからWAC運動(Writing Across the Curriculum)として、作文の授業の中だけでなく、各教科の中で「書く」という学習活動を広げようという運動が行われていました。つまり、「教科内容+書く活動」によって双方に良い効果を生み出そうとすることです。そのための実践形式としてBRDは合致しているのではないかと思います。

BRDは個別にレポートを書くのですが、私の今開いている授業では、グループ討議を経てグループレポートを書いてもらっています。これは、15分で書くという超強行手段ですが、討議を経ているのでかなり良い内容を書いてもらっています。ただ、書く段階で一人の力に頼りがちになる(他の人は口述したりして協力してもらいますが)ので、一人で書いてもらうのもいいかなと思っています。