KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

日本教育工学会大会での課題研究

「ICTを活用した教育システムをどのように評価するのか」というテーマの課題研究で話題提供をしました。ほんのメタファのつもりで引いた「月をさす指」が、なぜか会場を席巻し、それぞれが月と指にそれぞれの意味づけをし、「みんながそれぞれに違う月を見ている」だの「いや、オレは火星を目指す」だの、わけがわからなくなる一歩手前で議論しているようなスリリングさを覚えました。

ここでいう「月をさす指」とは、指(=その人の具体的な振るまい)だけを見ていると、月(=そう振る舞うことでどこに行こうとしているのか)を見逃すことになるというメタファです。それ以上のことはないのですが、みんながこのメタファを使い出すと、いろいろな想像力を引き出します。さように、議論の場でのメタファは強力なのですが、みんなが自分の意味づけで使うようになると、かえって議論のすれ違いを生むことになり、にもかかわらず、それを隠してしまうので、リスクは高くなりますね。

さて、評価問題をまとめてみると、活動理論(主体・対象・人工物)のモデルが一番有用かなと思いました。人工物は常に不完全なツールであって、それを人間が対象に向けて使うことで完成された活動になります。その活動全体を評価することでまっとうな評価ができるということです。このモデルは実態に合っていると思います。

会場の教室は満員でした。参加者の1人1人がそれぞれに何かを得たのでしょうが、しかし、この中で行われた議論を適宜再現できるようなテクノロジーはできないものでしょうか。それこそ意味のあるテクノロジーのような気がします。