研究するにはさまざまなスキルが必要だ.それは,論文を読んだり,専門書を読んだりすること「以外」の,あまり研究の内容に関係のないスキルだ.しかし,そのスキルが,実は,研究には「決定的に」重要なのだ.具体的には,パソコンのスキル,そしてデータ収集のための道具を使うスキルだ.
1つ目は,パソコンのスキルだ.Word, Excel, PowerPointのオフィスアプリ(マックユーザでは,Pages, Numbers, KeynoteのiWorkアプリ)は他の人に教えられるくらいに熟達しているべきだ.それは,チュートリアル本を1冊通して読みながら実習すれば,すぐにできることだ.
パソコンのスキルを教えてもらおうとしてはいけない.それは自分で習熟するべきことだ.若い人はそれだけ柔軟性があるのだから,自分より年を取った人よりもパソコンに習熟していて「当然」なのだ.パソコンを先輩に教えてもらおうとしてはいけない.逆に,先輩に教えるべきだ.研究に関しては,教えてもらう立場なのだから,せめてパソコンについては先輩に教えてあげられるように自分のスキルを磨いておこう.それが礼儀というものではないか.
2つ目は,データ収集のための道具を使うスキルだ.具体的には,デジカメの撮り方,ICレコーダでのインタビューの録音のしかた,ビデオカメラでの収録のしかた,大量の質問紙の印刷のしかたと綴じ方など.
デジカメはシャッターさえ押せば誰でも撮れる.だけど,撮らせてみるとみんなぶれている.デジカメの構え方やブレを抑える方法は,インターネットを検索すればたくさん出てくる.それを練習することだ.記録データとして写真を撮るときにぶれてしまったら最悪だ.しかもそういうチャンスは一度しかないのだ.
ICレコーダを,どのように置いたら音声がクリアに採れるのか,練習しておこう.ビデオカメラは,三脚の使い方をマスターしておこう.こういうことは,誰が教えてくれるわけでもない.自分でやることだ.
こうしたスキルを磨いておいて,先輩の研究の現場に入って,手伝うべきだ.そうやって研究の手順がわかって来る.自分のスキルを磨いておけば,現場で手伝いに加わることができる.もしあなたにスキルがなかったら,いても邪魔なだけだ.そして研究のしかたを学ぶ最大のチャンスを逃すことになる.そうならないように,いつでもスキルを磨いておこう.