KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

院ゼミコラム(8):研究のための学術書の読み方

先行研究を調べるためには,自分の研究に関連のある,論文と学術書を探して読まなければならない.学術書でない一般書は読まなくていい.

学術書と一般書とを区別するものは,引用文献リストが載っているかどうかである.引用文献リストのない本は,どんなに自分の研究に関係が近くても,学術書ではない.したがって引用することもない.よって読まなくてもいい.せいぜい参考程度にしておけばいい.一般書から引用すると,自分の論文の質は確実に落ちる.

さて,学術書の読み方.

できるだけ速く読む.できればとばし読みをする.まずは目次を見る.関係のない部分の本文はとばし読みでよい.全部を精読する必要はない.精読している時間などない.たくさん読まなければならないからだ.一冊の本のうち,自分の研究に関係がある部分は全体のごく一部だ.まったく関係ない場合も多い.その,ごくわずかな関連部分を探すのだ.

そうやって一冊の本を読んだらすぐに,その「ハイライト」を作っておく.それは,本全体の要約ではない.全部を読んでいないのだから要約しようにもできない.また,箇条書きでキーワードを並べたものでもない.そんなことは無駄だ.そうでなく,A4判半ページくらいの「文章」で書く.文章で書くというところが大切.

ハイライトの文章では,全体をまとめるのではなく,その本が一番主張したいところを切り取り,一言でまとめる.そしてそれに加えて,自分なりの批判を書く.つまり,著者の主張のまとめとそれに対する批判を書く.そうしておけば,自分の研究論文を書くときに,その文章を研究史の中でそのまま使うことができる.

研究史では,「誰々(何年)は……ということを主張した.しかし,これには……という欠点(不足)がある」というフレーズで話を進めていく.そうして,「これまでなされた研究はたくさんあるけれど,いろいろな不足があるのだ,だから私はここでこの研究をする」という展開に持っていくわけだ.そのために学術書を読む.

  • これまでの院ゼミコラム
    • 院ゼミコラムについて*1
    • 院ゼミコラム(1):自分のWebサイトを持つ*2
    • 院ゼミコラム(2):2年間は優先順位を変える*3
    • 院ゼミコラム(3):ゼミに出ることは息継ぎのようなもの*4
    • 院ゼミコラム(4):統計分析の腕を磨いておく*5
    • 院ゼミコラム(5):自分のスキルを磨いておく*6
    • 院ゼミコラム(6):研究会に参加したら何をするのか?*7
    • 院ゼミコラム(7):研究にはあなたの世界観が現れてしまう*8