KogoLab Research & Review

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【ミニマリズム】橋本努『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』(2)

2023年7月27日(木)

橋本努『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』(筑摩書房, 2021)のまとめの後半です。

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第4章 ミニマリズムの類型分析

エッツィオーニの分類によると、1) ダウンシフターズ:高級なブレザーにジーンズ、2) Strong Simplifier:リタイアしてボランティア、3) Holistic Simplifier:田舎に移住。

第5章 ミニマリズムの倫理

まずモノを捨ててみる。そのあとで人生を考える。人生の目的が見えなくても、人生の新しい一歩を踏み出すための倫理がミニマリズムである。アメリカでのスモールハウス運動は、スモールハウスに人間の精神を入れようというもの。それは擬似的な「自分専用の宇宙」になる。

シンプルに生きるためにはモノを買わないだけではなく、何もしない時間が必要だ。心からやりたいことに直結していない日常生活のToDoリストはノイズに過ぎない。インパクトのある仕事をするためには、時間とエネルギーを1つの事柄に注ぎ込まねばならない。自己実現ではなく「自己との和解」。

第6章 ミニマリズムと禅

すべてを得るためにはすべてを捨てねばならない。「無所有」となること。ミニマリズムとはこの世界のすべてを獲得するための生き方である。ミニマリストはすべてを捨て、「何者でもない自分」を発見しようとする。禅によれば、悟りを求める心もまた執着心である。悟りを求める心をこそ手放さなければならない。

第7章 資本主義の超克

資本主義においては貨幣のみが唯一の富の基準である。しかしそれは価値の代理表象に過ぎない。脱成長(decroissance)とは「より多いことがより良い」という信仰を放棄することである。脱資本主義の精神は、勤労倫理と快楽消費を拒否する。しかし、人々は勤労の義務を内面化してしまったので、これ以外の生き方を良い生き方とはみなせなくなってしまった。