KogoLab Research & Review

遊ぶように生きる。Vivi kiel Ludi.

【ミニマリズム】橋本努『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』(1)

2023年7月26日(水)

研究室に行って、モノを整理する。これもミニマリズムの実践かな。

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橋本努『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』(筑摩書房, 2021)

ミニマリズムは1つの倫理=行動規範である。そこには脱資本主義の精神に通じる回路がある。脱資本主義とは、資本の支配力に抗して、新たな文化を生み出す気概の1つである。

第1章 消費ミニマリズムの流行とその背景

こんまり、佐々木典士(ふみお)『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』、ミニマリストしぶなどを紹介する。スマホの普及は、人々に欲求はモノの購入で満たされるのではなく、モノを使用する活動によって満たされることを示した。モノを購入する場合は、どこにでもなじむ雰囲気「ノームコア」を持つモノを厳選する。

第2章 消費社会とその批判

ポスト近代は、1) 記号消費、2) 多様化と個性化、3) 生産者兼消費者=プロシューマー、で特徴づけられると考えられた。しかし、バブル後、記号消費は進まなかった。人々は差異を消費することに関心を持たず、ユニクロや無印良品のようなモノを購入することで満足し、個性を商品によって表現しなくてもいいと考えた。近代化は人々に便利な生活を提供した結果、人々はあまり考えずに生きるようになった。しかし、生活が不便なほうが「習熟する喜び」や「主体的になる喜び」がある。受動的な生活を捨てて、能動的な生活を送ることの素晴らしさを発見する。

第3章 正統と逸脱の脱消費論

社会は人が働くことを過剰に評価している。その結果、人が働きすぎる。仕事を通じて自己を確立しようとする企てはやめたほうがいい。会社はあなたの自己表現の場ではない。意義ある人生を送るための収入はそれほど多くなくてもいいかもしれない。私有財産を追求する過程で、飽き飽きしながらも蓄財してしまう傾向がある。ミニマリズムは「無所有」の理想を掲げる。これは社会の複雑な問題に対するシンプルな実践である。