ちょうど一年前の「仕事日記」を読んでいたら、なかなかいいことが書いてある。「いいこと」などと自分でいうのはおかしいが、実際私は書いたことをほとんど忘れてしまうのでこういう感覚になる。書いたときは「いいこと」だと思って書いたのだからもう一度読めばおそらく「いいこと」に違いないはず。幸せな人ではある。
さて、そのいいことというのは仕事のやり方について。こんなこと。
いつも何かひとつの仕事を始めるときに思うのだが、コツはそっと始めることだ。さあ、やるぞと言っていきなりたくさんのことをやってはいけない。仕事を始めるときは、一番簡単に思える部分から始め、しかも、1日目はそれほどたくさんやってはいけない。少しだけやってみると全体として何をやらなければいけないかが分かるので、それをリストアップしてメモを作る(課題分割のテクニック)。
それを目に付くところに貼っておいて、済んだ仕事から塗りつぶしていく。私の場合は写真のように(写真省略)、マックに貼り付けてある。人間の心理というのは不思議なもので、一つでも塗りつぶしてあると、次はもう一つやりたくなるのだ(自己モニタリングによる動機づけのテクニック)。
このようにして苦労しなくても仕事全体がいつかは終わることになる。仕事メモを作るときのコツはただひとつ、たくさんのメモを貼り付けてはいけないということだ。せいぜい2つか3つまで。これは一つの仕事に飽きたときに別の仕事をやるためだ。人間はいちどきにたくさんの仕事をこなすようにはできていない。いっぺんに二つの仕事をやろうという人はハードルの高さを二倍にするようなものだ。ハードルがいくつあっても、一つずつ順序よく飛び越えていけばなんのことはないのに、一度に二つ以上のことをやろうとするから飛び越えられなくなってしまうのだ。だから、いちどきにやる仕事はひとつに限ること(シングルディールのテクニック)。
- 「ちはるのしごとにっき」98/04/21より
そっと始めるというのは味わい深い。たとえばたばこを止めようと思っている人は、いきなり完全禁煙というのではなくて、徐々に本数を減らしていくのがいいんじゃないかな。私はたばこを吸わないので感覚がつかめないけれど、長い時間をかけてできあがった習慣を変えるのには、やはり時間をかけることが必要だと思う。
なんでもない習慣のように気負いなく仕事をしたいと思う。強すぎる思い入れはときどき目を曇らせるから。